孤児のTS転生

第72話

…なんというかまともそうな奴が1つしか無いな。

俺は別に復讐なんかしたくは無いからまず復讐者は除外するとして暴食者もこれ以上腹が減るのは勘弁だ。

魔の探求者はその職業になるだけで気が狂ってしまいそうだから除外。

…原初魔法使いぐらいしか使えそうな職業がないってどういうことだよ？

「まぁとりあえずこれで良いか」

俺はそう呟き空中に浮かぶ透明な板を触れる。

そうすることで俺の職業は原初魔法使いへと変わりまたLvが0の数値に変わってしまった。

あぁ…高速展開と並行思考のスキルが無くなったから一気に戦闘能力がダウンした感じがするぜ…。

だがこれ以上に強くなるためには転職は必須事項だったわけだし仕方がないのか。

さて、転職したことで手に入れた職業スキルは…『召喚魔術』か。

「魔法使いなのに使うことができるようになったスキルが魔術なのか…」

とりあえず詳細を確認してみるとしよう。

そう思い俺はスキル欄に書いてある召喚魔術の文字を触る。

召喚魔術:Lv1 あらゆる空間に呪文を描くことにより対価に応じたモノを召喚する。

…これって俺の使っている魔術と何が違うんだろうか？

まぁあんまり違いはないと思うが…。

というか職業を選択した時に思ったことだが頭の中になんか変な呪文というか魔法陣みたいのが思い浮かんでくるんだがこれはこのスキルがあるからか？

思い浮かぶ魔法陣の数は3つ。

『最下級悪魔召喚術』、『最下級天使召喚術』、『最下級合成召喚術』。

どうやら悪魔召喚と天使召喚はその名の通り対象となるやつをその場で召喚するという魔術だがもう一つの合成召喚術は陣の両辺に物を置きそれを生贄にすることで何かを召喚するというなんともRPGでありそうな錬金術に似た魔術のようだ。

そんな事を考えているとドアがノックされ返事もしていないのに開く。

そこには冒険者のような服装をしたまだ幼い顔をした男の子が出てきた。

俺を見て驚いた顔をしながらこちらへと近づいてくる。

「や、やぁ？えーと…僕…じゃないや俺の名前はヨグって言うんだ。よろしくね？」

そう言って俺の方を向いて微笑を浮かべてくる。

これは俺も挨拶をしなければと思い挨拶をする。

「…私の名前は…レナ…助けてくれてありがとう」

そういうとヨグの微笑は苦笑へと変わる。

まぁこれが俺の平常運転だからな。

もう変えられないと思うしぶっちゃけコミュ障を直そうとももう思っていない。

これが俺で私、This is meなのだ。

それから私とヨグは何気ない会話をすることにした。

といっても私にとっては周囲の情報収集のような会話だったが。

んでそこからわかった事はここは王国ではないらしい。

ここは隣の国のシャイン混合連合国という名の幾つもの国が1つにまとまった国らしい。

そのせいで王様が12人いるらしく今の政治は貴族というものが存在しない政治のためかなり大変なものとなっているとのこと。

それで現在いる場所はその連合国の一番端に位置するメイデン大迷宮街というなんとも言えない名前の街らしい。

大迷宮街という名前の通りここには遺跡という名のダンジョンがありそこからは『古代遺物』やら『神遺物』というアーティファクトが取れるらしい。

一応俺のつけていたあの仮面も階級は低いがアーティファクトだったのだが…どこにいっちゃったんだろうか？

んで今の俺の状況はというと全治2ヶ月ぐらい。

その間はここを離れなきゃ何をしても良いらしい。

あ、ちなみにもう入院費は虚空庫から金貨を少し出して渡しているぜ。

そうして俺の病院生活のようなものがまた始まった。

「暇だなぁ」

あれから1ヶ月と15日が経った。

普通に休んでいると何故か身体が勝手に動いてしまうという謎現象に見舞われた私は部屋でやることは大体やった。

魔術の根本からの改造と修正。

持っている材料で役に立つようなものの作成。

悪魔と天使の召喚の検証。

悪魔は対価をやらないと俺に害を及ぼそうとするしいちいち代償がでかいので役には立たない。

天使はなんか私のことを睨みつけてはくるものの普通に手伝ってくれるから悪魔よりかは優秀だ。

「やることが無いなぁ」

俺の今の気持ちは何かをしたいということで埋め尽くされている。

もはや病気のようなものだこれは。

何かをしなくちゃ暇すぎて死ぬっていう病気。

そんな事を考えながら石を加工した知恵の輪を弄り回す。

あの分厚い本ももう一度読み直しできる魔術を紙に書き写しやれることはもう十分に行った。

だからこそ今やることが無い。

部屋から、この施設から出れないから情報源は毎日夕方に来るヨグの冒険話だけ。

それが唯一の楽しみになってしまった。

そうして暇だと言い続けてようやく夕方になりドアをノックする音が聞こえいつものように開かれる。

そこには泣き顔を貼り付けたヨグの姿があった。

ヨグは「ぅぅぅう」とうめき声のような声を殺した声で俺の近くまでやってくる。

「ヨ、ヨグ？どうしたの？」

そう私が言うとヨグは一層泣き声を大きくした。