第55話
レナの朝は早い。
まずは起床、大体5時に起き癖となってしまった背伸びをしてからストレッチを行う。
開脚、前屈その他もろもろを行い身体を動かしてから目が完全に覚め一日が始まる。
その後は『飽食の胃袋』から適当な食べ物を出してかぶりつく。
「今日は…パンか」
取り出したパンを食べつつ今日やるべきことを頭の中で考える。
今日やるべきことは冒険者ギルドでのクエストを受けることぐらいだろうか?
それ以外にやることはない。
俺はベッドから下りて寝巻きを脱いで壁にかけている服を着る。
相変わらず黒で色が統一された服、そのせいで白色の髪が目立つ。
そうしてテーブルに置かれているナイフをベルトへ仮面を顔面につける。
ちなみに俺の着ているこのナメクジからもらった服等は実に高性能な物でアーティファクトに近い能力を保持しているらしい。
効果は階級でいえばB級品に及ぶといわれた。
服は一式揃えて着ていると物理・魔法ダメージを軽減してくれるというものでナイフは特殊で刃を飛ばすと一定時間経過すると戻ってくるウェポンリターンという効果が付いている。
これにより刃を飛ばしてもなくすなんてことは起きないらしい。
そういえば王国の研究者が言っていたことだがナメクジがコレを本当に自分で作っていたのならあのナメクジは神に近い力を持っていたと考えられるらしい。
アーティファクトは一説によると神の作り出した失敗作。
S級品になると神の遺物、つまり神が残していった傑作と言われている。
それを作り出したであろうナメクジは神に近しい力を持っていると研究者達に言われた。
「さて…と、飯も食べたしギルドに行きますかね」
今の時間は6時ぐらいかな?
ちなみにギルドは24時間開いている。
ここ伯爵領は魔の樹海とも言われる森が北に広がっており魔物がわんさか出てくる。
そのため冒険者が魔物を間引きに行かないと魔物が街や村に出てきてしまうため24時間展開して魔物をいつでも討伐、狩猟できる体制を作っているというわけだ。
まぁここでの依頼不足は起こらないからラノベである依頼争奪戦とかは起こらない。
「いつ行っても依頼があるっていうのはいいねぇ」
王国のギルドではいつ行っても依頼がなかったからねぇ。
それにここには高ランクの冒険者が集まるからそうそう弁えのない冒険者が来ることなんてないし…まぁあの誰だっけ?
初めて『ドラゴニア』の皆さんに会った時遅れてくるようなパーティもいるが。
そんなこんなで考えた後に宿のドアを開けギルドへと向かう。
ここからギルドへの距離は約200mほどで結構近い。
まぁ身長が低いせいで歩くと普通の人より2倍の時間がかかるから近くて遠い状態なのだが。
…幼女移動中…
「ふぅついたなぁ」
さて俺のランクは今はCランクだ。
Cランクの依頼は…うわぁ掲示板にいっぱい依頼書があるよ…。
相変わらずといったところだろうかここの依頼の数は凄まじく多い。
あるのは主に魔物の討伐と魔の森の調査たまに住民からの依頼がある。
「今日は何にしようかな?調査はパーティ向けだし、討伐は結構強い奴があるなぁ…住民からの依頼は無いか」
しょうがないか…今日は討伐依頼を受けることとしよう。
冒険者は依頼を定期的に受けとかないとランクの剥奪が起こってしまうからな。
まぁAランクになると剥奪するということがなくなるから目標は大きくAランクだね。
「うんコレにしようか」
俺は掲示板に貼り付けてある一枚の依頼書を取る。
依頼内容は魔の森付近の草原に出没するとある魔物の討伐。
俺は早速その依頼を受付に持っていく。
「これ、お願い」と俺が受付の人に依頼書を渡すと受付をしてくれる人はすごく困ったような顔でこちらを見ながら言った。
「あのね?これCランクだよ?君は一応だけどCランクみたいだけど…しかも一人で依頼をやるみたいだし…」
受付の人はそのままくどくどと何かとつけて俺に向かって文句を言ってくる。
こいつにはもう少し周囲を見た方がいいんじゃないだろうか?
こちらを見てくる人は大体がこの受付の口調が気に入らないらしく受付にガンを飛ばしている。
他の受付の人からも蔑むような目を向けられている。
そうして十数分後にようやくこの受付の話が終わり依頼の受理をしてくれた。
俺は後ろを向きそそくさとギルドを後にする。
ギルドを出る前に受付の方見るとあの時俺の受付をしてくれたエリザさんが今受付をした人を無表情で取り押さえていた。
右手には羽ペンを持っておりそれを受付の首に突きつけている。
そして俺がそちらを見ていることに気づいたのかこちらを見てすぐに手を離し笑顔になりこちらへと手を小さく振ってくれた。
「ひっ…………」
俺はその光景に思わず声を漏らしてしまい苦笑いをしながらエリザへと手を振る。
手を振るとしばらくしてエリザは転がった受付の腕を持ちギルドの奥へと行ってしまった。
「…俺は何も見なかった」
俺は今見たことを忘れようと心に決めた。
そしてエリザさんは怒らせないようにしようと思った。
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