第53話

俺達はアルキアン様を待っている間に情報交換などを行った後ようやくと言ったところだろうか。

時間通りにアルキアン様が到着した。


「やぁこんにちは。君達が今回僕のことを護衛してくれる冒険者だよね?」


そうアルキアン様が言うとこのパーティを代表してフガクさんが挨拶してアルキアン様は馬車へと乗り込んだ。

馬車はゆっくりと動き出し俺達はついていく。

中にいるアルキアンは窓を開けフガクさんと話し込んでいる。

さっき聞いたことだがフガクさんは昔にレイアン伯爵とパーティを組んでおりそこからレイアン伯爵の家とは仲が良いらしい。


にしてもこの馬車のスピードが少し早いなぁ。

周りを歩く『ドラゴニア』の人達は普通に歩くペースだが俺は少し小走りしなくちゃ馬車に追いつけない。

まぁ体力はまだ保つからいいがこれから何時間もこのペースとなると結構キツイかもしれん。


そんなこんな歩いているとフガクさんが歩くペースを落とし俺の隣にくる。

俺はどうしたんだろうとフガクさんの方へ顔を向けるとフガクさんは少し笑いながらに言う。


「…すまんがアルキアン坊の近くで護衛してくれないか?もしかしたらやり損ねた盗賊が接近する可能性もあるから…な?」


俺はすぐに察した。

フガクさんは俺に気を遣ってこんなことを言ってくれていると言うことを。

俺は申し訳ないと思いつつフガクさんに「すみません」と言うがフガクさんは「…しょうがないよ」と言い俺を抱えて馬車の扉を開けて俺を入れてくれた。

そうして俺がアルキアン様の前に座るとアルキアン様が俺に話しかけてくる。


「君は…あの街、ファールス街にいた孤児。僕を助けてくれた子だよね?改めて僕を助けてくれてありがとうね?」


アルキアン様はまだ俺のことを覚えていたようで律儀にお礼を言ってくる。

こ、こう言う時ってどうするのが正解なんだろうか?

とりあえず自己紹介でもすればいいのだろうか?


「え、えーっと…俺いや私は、Cランク冒険者のレナといいます…今回はよろしく、お願いします」


そう言うとアルキアン様は少し笑う。

もしかして何か間違ったことでも言ったのだろうと俺は少し考え首を傾げる。


「ふふよろしくね『小さき英雄』さん。では改めて、僕はアルキアン・アマガル・フォン・レインバードだよ」


そこからは一方的な質問が始まった。

得意な属性はと聞かれ俺が「雷です」と言うとアルキアン様は「なら魔法学園にも通えるね?推薦しようか?」と言われて俺は思わず首を振る。

それからも色々な質問をされ喋るごとにだんだんとアルキアン様のことを理解することができてきた。


「ねぇレナ…もっとフランクに話しなよ」


「い、いやしかしながらそう言うわけには…」


そう言うとアルキアン様は俺のことを言葉で責めてきた。

その顔はまるで面白がっている悪ガキのような感じの顔をしておりつい逃げたくなるような声色で話しかけてくる。


「いやいや僕達は歳も近そうだしさ友達になれると思うんだよね。あ、僕友達が丁度欲しかったんだ。君みたいな男の友達っていつもかしこまっちゃうからさー…貴族として命令させてもらおっかな僕と対等な友達になってよ。ねぇ?」


俺は後退りしそうになりながら「う、うん」とついうなづいてしまう。

こ、こいつ俺のことを男だと思ってくれているのか…まぁそのほうが都合がいいっちゃいいけどさ。

名前で女だとわかりそうだが…わからないものなのかねぇ?


そうして俺はアルキアン様と約束をして2人でいる時はもっとフランクに話すことを約束した。

アルキアン様から普通に呼び捨てでアルキアンという風に呼ぶようにし、敬語は使わない。

そのかわりにアルキアン様は俺へもう貴族としての命令を今後一切使わないことを約束してくれた。

まぁそのかわり友達として頼むかもしれないねと笑いながら言っていたが…。


これじゃ本末転倒というやつではないか?

そこからは俺達2人は他愛のない話を始めた。

アルキアンは俺にこの世界の常識や良い魔道具についての知識をペラペラと言いそれに負けず俺は『ドラゴニア』の良いところや出会った頃から今までを話し、レイン街にあった串焼きの話もして盛り上がった。


そんなこんなで俺達が2人で話に盛り上がっていると急に馬車が止まる。

俺は即座に立ち上がり窓を見るとモエさんが俺達の方を向いて言う。


「盗賊よ!レナはアルキアン様を守って!」

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