孤児の冒険者活動
第51話
「あのナメクジを倒してからもう2週間も経つのか…」
俺がナメクジを倒した後、騎士団から激励の言葉とこの度の戦闘への参加と勝利、貢献による報酬を王国からもらった。
そしてこの戦争で傷がついた兵士や冒険者を癒すために王国内の宿や診療所となっている教会は王国が金を出してくれているとのことで休ませてもらっている。
期間は1ヶ月間ずっとそのサービスを行なっていると発表されている。
そんなサービスが行われている中で俺がいる場所は診療所となっている教会だ。
俺は診察してくれる奴に自分で回復するから大丈夫だといったのだが、小さい頃から回復魔法やスキルに頼っていると身体が丈夫にならないからと説教をくらい大人しくねっ転がっている。
だからといって何もしてない訳ではない。
魔術の研究や発動実験など隠れて行っていた。
だがバレて俺は囚人がつけるような魔力を遮断して魔力を使えなくしてしまう手枷をつけられてしまった。
しかもつけたのがギルドマスターだから逆らったら冒険者として活動できなくなってしまうため逆らえない。
そういえば王国からの報酬は冒険者一人一人の願いをできる限り聞くというものだった。
そのため俺が願った報酬も一応もらっている。
まぁそれが今俺の横の机に置いてある袋なのだが。
「よくもまぁこんな都合のいい物があるな」
俺がもらった物それは『飽食の胃袋』という物だ。
これは何十年も前にこの王国から発掘されたアーティファクトである。
このアーティファクトはA級品で普通は金持ちじゃなきゃ買えない代物だがナメクジと直接戦った人物として評価され特別に報酬で渡された。
『飽食の胃袋』の効果は袋の中からパンや干し肉などが半永久的に出てくるという物だ。
これは周りの魔力を吸い袋の中にランダムに食べ物が出てくる。
何故こんな物を望んだのかというと…。
「『グキュュュュュゥ』…腹減ったなぁ」
俺の獲得したスキル『暴食』の効果に理由がある。
スキルの説明にある食欲の増大のせいで俺の腹は満たされることがない。
俺の身体のどこにそんな物が入るのかっていうぐらい食べる。
というか明らかに胃袋には収まってない量を食べている時点で思うんだがこれ『暴食』のスキル欄の説明に書かれていない隠し効果もありそうだ。
『飽食の胃袋』を開け手を突っ込む。
取り出したのは林檎。
蜜が沢山入っており甘くて美味しいが空腹は治らないのでまた手を突っ込んでは食べるを繰り返す。
食費はこれで無いようなものになったが代わりにこの空腹が続くとは…。
腹が減っている状況が続くと集中も途切れてくるから戦闘に専念が困難になってしまうな。
「全く、何かいい策があればいいんだがなぁ」
そんな感じに寝っ転がりながら口に物を詰めて空腹を満たしていると扉が開く。
金髪でカジュアルっぱい服を着たこれが60歳とは到底見えないおっさんが扉を開けて入ってきた。
俺はつい反射的に「げぇ」といってしまうがこのおっさんはそんな俺のことは気にせずに喋り出す。
「やぁやぁレナ君お元気そうで何よりだよ…ところでそろそろ冒険者としての仕事をしないかい?」
このおっさんの名前はニベルというこの王国の冒険者を統括することができるギルドマスターだ。
そして俺に枷を嵌めた奴だ。
全くもってこのおっさんがここに来るということは大体がめんどくさいことを持ってくることが多いからできれば来てほしくない。
この前はこの国の全体の清掃という名のギルドの評価上げ。
その前はゴブリンの処理。
ゴブリンは剥ぎ取れる部分が耳と睾丸と魔石だけでそれ以外は処理しなきゃいけないのだがこの国にいる魔法使いは大体がパーティと一緒に冒険したいということでこういう雑用はやってれない。
そのため少しでも魔力を使いたい俺はギルドマスターに頼んで枷を一時的に取ってもらいこういう雑用をやっている。
「ったく…今日はなんの御用で?」
俺がそんな風にぶっきらぼうに言うとギルドマスターは少し笑う。
そして何も言わずにベットの横にある椅子に座り腕を組み話し始めた。
「レナ君…君は今日も暇だよね?だからいつも通り依頼を君に持ってきたよ!」
俺はその言葉を聞くと同時にベットの掛け布団を蹴って扉を掴む。
が、ダメだったようだ。
俺の肩にはギルドマスターの手が置かれており足を一生懸命に動かして前に行こうとするが肩を掴まれこれ以上動けなくなってしまった。
ギルドマスターはそんな逃げ出そうとする俺を掴みながら言葉を言う。
「今日はねぇ…久しぶりに冒険者らしいことができるよ?何せ護衛依頼だからねぇ?」
俺は動かす足を一度止めてギルドマスターの顔を見る。
相変わらずうぜぇ顔をしてやがるぜ。
さっきから顔は頬が上がっており明らかにこちらを嘲笑うかのような顔をしている。
「ふふふ今日の依頼の主人は君もお世話になっているレインバード伯爵様からの依頼。息子さんのアルキアン様のレイン街までの護衛だ」
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