第48話

さて、どうするべきだろうか今の俺の実力じゃ前みたいにやられるだけだ。

いや今はローガンさんもいるが…現在はナメクジの魔法部隊への攻撃を防いでくれている。


「なら俺がやるしかないか…」


俺は身体に力を入れ身体強化を行った後ナイフを構えて走り出す。

出来るだけ敵に近づき右手で魔法陣を描く。

シンボルはつむじ、属性は風。

俺は不定形の方に腕を向け言葉を発する。


「魔法陣展開!ライジングゲイル!」


魔法陣から黄緑色の無数の波動が放射線状に飛び回る。

その正体は可視化された風の流れである。

この魔術は言ってしまえばものすごく強い風を生み出すことができる魔術でありその魔術の波動に当たるとたとえ重い物でも足をすくい風の流れのままに飛ばしてしまうというものだ。

ただし全ての波動を思い通りに操ることは難しいので明後日の方向に吹き飛んだりする奴もいるがまぁそれはどうでもいいか。


俺の狙いは真上にぶっ飛んだ奴に攻撃を与えることだ。

今の俺の魔力はほぼ満タンだ。

どんな魔術でも撃てるしどんな攻撃だって魔力を使った守護結界を使って防ぐことができる。

だからこそ今は俺のできる最大限の攻撃を喰らわせ敵を一網打尽にするべきだろう。


シンボルは雷。

今までで一番破壊力がある魔術をお見舞いしてやろうじゃないか。

木より高く打ち上がった敵は…全体的に見て人型の黒騎士が多いかな?

不定形の奴は地面にへばりついてて真上にはあまり飛ばないみたいだな。


「喰らえ!魔法陣展開…サンダーレイン!」


魔術を発動すると共にどこからともなく『ゴロゴロ』という音がして一瞬にして辺りは閃光へと包まれる。

そこから起こる雷。

打ち上がった敵はまるで避雷針のようで落ちて来る雷は打ち上がった者へと当たっていく。

まぁそれにあいつらは金属を纏っているような者だから雷の耐性はゼロに等しいだろう。

前までは魔力が無くて使えなかったがこれをあの時使えれば勝てたのだろうか?


「いや、そんなこともうどうでもいいか。今は目の前のことだけに集中しよう」


ナイフを握り直し打ち上がらなかった騎士の所まで移動する。

まだ打ち上がった者へと視線を上げている奴らに今までの制裁の如き攻撃を与える。

そうして俺は騎士の股間を蹴り上げる。


「ッ!…」


流石に騎士もこれには応えるだろう。

何せコイツらの鎧はしたが布でできているからな。

簡単に攻撃が当たる。


「ふんッ!俺もあの時から少しは戦闘面については成長しているのさ」


さて次々行きますか。

身体強化を脚に集中させ一歩一歩力強く踏み込む。

もはや上半身にかかっている身体強化は薄いが元々俺の近接戦闘でのメインウェポンは脚での攻撃だ。

あくまでも腕での攻撃はサブウェポン。

さてと、そのままぼんやりとしている奴らの急所でも狙いますかね。


足で股間を蹴り上げ時に身体強化を一瞬だけ最大限まで上げた攻撃を後頭部に入れていく。

そうしていると鳴り響いていた閃光も無くなり空に舞い上がっていた黒騎士が丸焦げになり落ちて来る。

まさに文字通りの鉄の雨。

運悪く真下にいた不定形の奴らや黒騎士の生き残りは当たりそのまま血のような物を吐きながら潰れて圧死していく。


「これだけしてもまだこんなにいるのか…」


周りを見渡すと木々の隙間から出てくる敵共。

継ぎ接ぎでできた魔物の姿をした奴ら、不定形の化け物、そして黒騎士。

そのほかにも色々な姿をした魔物が木々の隙間から出てくる。


「ジリ貧かなぁ…魔力があるからって油断はできないし」


足を動かし継ぎ接ぎを蹴り上げる。

一向に敵は少なくならない。

そうして俺が諦めようとしていた時だった。

俺が相手していた黒騎士の頭に何かが飛来して突き刺さった。


「…ッ!?」


一瞬のことで俺は困惑して周りを見渡す。

見えたのは黒騎士の頭に突き刺さったショートソード。

後ろを振り返るとそこには白銀の甲冑に身を包んだ軍隊がいた。

軍隊の中で一際大きな旗を掲げる騎士が旗を向けて大声で言い放つ。


「全軍ッ!突撃ーーーッ!」


俺はその声に呆気を取られその場で呆然としてしまう。

すると大きな旗を掲げる騎士は俺の方へ歩きながら近づきこう言った。


「イードラ王国レインバード伯爵領所属の第一騎士隊長のクラージュだ…今までよくやったな少年」


*今回使った魔術一覧*


ライジングゲイル:強風を生み出し上に打ち上げる。ただし操作が難しいため明後日の方向へ飛ぶこともある。

サンダーレイン:雷の雨を降らせる。中級魔術だが威力は上級魔術に匹敵する。

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