第35話
黒騎士を魔術で殺した後俺は騎士の死体を集めてた。
騎士は鎧を着ているため重かったのでいつも通り身体強化を身に纏って運んだ。
全くこいつら何人いるんだか…そういえば死体を見ても何も思わなくなったなぁ。
慣れてきたって言うのはなんか違うがな。
今でもこの死体とか見ると気持ち悪いって思うし。
だけど前みたいに死体を見て心臓が痛くなったり、吐き気を催すなんてことは無くなった。
これもスキルの中にある耐性のおかげだろうか?
…幼女行動中…
しばらく死体を集めて一ヶ所に集め終わった後に魔術で水を出し身体を洗う。
血がカピカピに固まってしまい落とすのが大変だったが時間をかけて洗い流す。
ようやくやることが終わり腰を丸太におろしているとローガンさん達が帰ってきた。
そうしてようやくローガンさんが俺に寝ていた時のことを話してくれた。
あの襲ってきた騎士のことも。
俺たちが寝てモエさんとミニューさんが起きていた時ミニューさんの探知の魔法に異常を感じローガンさんを起こしてローガンさんに周りの探索を頼んだそうだ。
そして見たのがあの騎士の小隊。
その中でも異色を放つ黒騎士が自らのことを小隊長と言い目撃した者を殺せと言いローガンさんに襲いかかったらしい。
それが戦いに火をつけて攻撃が始まったらしい。
最初こそは少し劣勢だったらしいが戦いの音を聞きつけフガクさんとエルペスさんが駆けつけて戦いに参戦して攻防が逆転、劣勢が優勢へと変わりどんどん騎士を薙ぎ倒したが小隊長を名乗る黒騎士がオーブを掲げると乗っていた馬がいきなりあの蜘蛛豚へと変わった。
そこでフガクさんとエルペスさんが蜘蛛豚を相手したおかげで黒騎士への攻撃が弱まり攻防戦が優勢でも劣勢でもないいわゆる泥試合になってしまった。
そこで現れたのが俺ということだ。
俺が隙を見て魔術を放ったことで黒騎士を倒したということだ。
そして黒騎士はローガンさん達に言った。
「十数日後には我らが本隊がこの地に到着するだろうそうすればお前らの国はもう終わりだ」と言ったらしい。
他にも「お前らが先兵を殺してくれて助かった」やら「我らの因縁の敵を討てる…ブリチェスター帝国に栄光あれ!」とも言っていた。
このことからおそらく数十日後には戦争が開始されるらしい。
俺は思った。
これほど不幸なことあるのかと。
おそらく殺した先兵というのは俺が前の街にいたときに家に不法侵入していたあの不審者だろう。
なんとなくあの騎士が身につけていたバッチがどこかで見たことがあると思っていたがローガンさんの話で大体予想ができた。
だが俺はあいつを殺してはいないぞ?
…つまり俺はやっていない。
そうさ、俺は何も悪くないよな?
そんな風に考えて気持ちを落ち着ける。
まぁ俺は殺してないし関係なんてないよな?
そんな風に考えているとエルペスさんが口を開く。
「さて、この件を出来るだけ早く王に伝えなければならないですね…準備をしましょう。すぐにお知らせしなければ」
そう言うとローガンさん達が一斉に行動を開始する。
笑っていられる状態ではなくなったことを告げられたその言葉と同時に全員が動き出す。
鉄は燃やせないから騎士の身ぐるみを剥がして金などを取りミニューさんが火属性の魔法を使い燃やしていきローガンがテントを片付ける。
そして全ての準備が終わり全員が荷台へと乗り込みエルペスさんがジェヴォーダンに鞭を打ち狼車を走らせる。
走り出した狼車は魔物を轢き魔獣を轢き山賊すら轢いて崖から落としていく。
中は運ぶ荷物を抑えるので精一杯。
誰も喋りはしない。
荒々しいその走行する狼車は谷すらジャンプで越えていくその度荷台が揺れて車酔いを起こしていく。
吐きそうになりながらも俺は小さい身体で荷物を抑える。
走り続けること1日。
休むことはなく走り続けようやく目的地のイードラ王国の王都イードラへと着いた。
そこからはラストスパートの如く今より速く走り門の前まで移動する。
俺は目が回ってしまいエルペスさんと門番との会話が耳に入ってこないがまぁ王に知らせてくれとかそういう会話でもしているのだろう。
そうして門番が急いだ様子で狼車を中へと入れまた狼者を走らせる。
「少年、あんたはここで降りたほうがいいだろう。これからの王様との謁見には礼儀作法というものが必要でなまぁなんだ少年には荷が重い空気になっちまうからよ」
ローガンさんはそうして一白置いて「ここで降りてくれ」と言われた。
…まぁそりゃそうなるだろう俺は前世の記憶があってもこの国の礼儀作法なんぞは知らないしそれがただのFランクともなると他の人の質が疑われる。
あくまでもこの件の依頼人はエルペスさんだ。
印象を悪くしてはいけない。
俺は「わかりました」と言い狼車をエルペスさんに止めてもらい依頼書のサインと報酬を受け取り狼車を降りる。
そうして狼車に向かって言う。
「エルペスさん!『ドラゴニア』の皆さん!3日間ありがとうございました!」
そう言うと何も言わずに狼車は動き出した。
それは争いをこの国に告げる車。
それは王に戦いを知らせる車。
俺はそれを視界から見えなくなるまで見守った。
そうしてこの日から戦争への時計が回り出した。
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