第6話

熊から遠ざかるようにして早歩きをして数十分の時間をかけようやく森の入り口まで着く事ができた。

どうやら俺は採取に夢中になりすぎたせいで森の中の奥の方に進みすぎたらしい。

もう絶対に採取の時は夢中になって奥まで行かないようにしよう。

もしかしたらさらに奥の方に行ったらやばいやつとかいそうだしな。


「今日はもう帰ろうかな?」


精神的、身体的に疲れた。


にしてもいつかはあんな奴らも倒せるくらいにはなりたいものだ。

せっかくの異世界転生だし少しずつ強くなりながら生きていこう。

まぁまずこの貧弱な身体能力を改善しないことには奴と戦うのは夢のまた夢みたいなものだが…。


そんな風に考えながら歩いていると視界の隅に水色の物体が見えもしやと思い近づいた。

その水色の物体はあの国民的キャラクターに近い姿をした体?の真ん中に核のような物が浮かんでいる。

そう…すなわち『スライム』である。


「はぁぁ初めて見るのがこいつだったらなぁ」


そんな言葉が出てしまう。

まぁいいや。

ところでスライムは敵対してこないのかな?

今、目の前にいるのだが全く動こうとしない。

まず生きてんのコレ?


俺はツンツンと指で突いてみる。

あまり効果はないようだ…。

癖になるような感触だ。

ずっと触っていたい衝動に駆られる。


…討伐するか。

この世は所詮弱肉強食。

弱き者は淘汰されるのが運命なのだと割り切って俺の糧になってもらおう。

俺はLv1だからな。

腕力、体力が1という紙性能だから倒せるのは倒してLvをいち早く上げたい。


さて、どうやって倒そうか。

一番簡単なのはそこら辺の棒で核を突くというのが定番だが…。

どうせ腕力が無くて武器を持てないということを考慮すると素手で戦う事が最適だろうか。

まぁとりあえず殴ってみようか。


「せいっ!やぁ!」


『プルン』


効果はないようだ…。

身体自体がゼリー状になっているので物理攻撃は効かないようだ。


だが俺は…。


「君がッ泣くまで!殴るのをやめないッ!はぁはぁ疲れた」


『プルン、プルン』


全く効いていないぜ。

討伐は多分できないだろうけど殴る事でトレーニングになるかもしれないし、とりあえず殴る!

コレに限る。


「時間はあるし殴ろうか」


それから俺は日が傾くまで一心不乱にスライムを殴り続けた。

ひたすら殴り続けたまに休みそして殴り続けるそれを繰り返し行い続け…。


「はぁッ!せいッ!」


時にどのようにすれば効率的な体運びができるかを考えながら行いまた、時に掌や手の甲を使いながらスライムを殴っていく。

そしてついてついに…。


「倒せるわけないんだよなぁ」


そう倒せるわけがない。

俺がどれだけ殴ってもスライムは『プルン』としか言わない。

このゼリー状を貫いて核を壊すなんて夢のまた夢である。

どれだけ戦い方を工夫したところで元のダメージが0なら何をやっても0である。

まったくもって意味がない。

こいつも呑気に草を食べている。

まるで相手にされてない。


そろそろ夜になってしまう。

拠点に帰らなければならない。


そう思い疲れた身体に喝を入れ拠点へと走り出す。

本格的にスライムを倒すためには今の腕力では到底倒せない。

なので今日から体力作りを始めようと思う。

まず初めに森から拠点まで走って帰ろう。


次に来た時は、必ずスライムを貫いて見せる。

そう思う俺であった。






「ようやくついたぁぁぁ」


長い道のりだった。

何度も途中で止まりながらも歩く事なく走り続けようやく拠点へとたどり着いた。

水を浴びたいがここには水が無い。

ここはスラムだから水道や井戸といったものもない。

あるのは酔っ払い共の置いていった酒だけだ。

まぁいいやそんな事はどうでも良い。

とりあえず飯にしよう。

今日の収穫物を布の中から取り出していく。


ん?

どうやって持ってきたんだって?

そんなの四角にした布の中心に草とか赤い実を詰めて包んでそれをそこら辺に生えている蔓を自分の腰と一緒に巻きつけるだけだぜ?

落ちないように固定するのが大変だが飯は大切だからなこれだけする価値はある。


「という事でいただきます」


ハート形の草だった物を食べる。

森の中に沢山あったから丸めて草団子みたいにして持ち帰ってきた。

こっちの方が多く入るし噛みごたえが良くなる気がする。

とりあえず半分は残す。

明日も朝ご飯は草である。

さてと次は赤い実だがコレどうやって食べようか?


考えてみたがコレ、ジュースっぽくできるんじゃないか?

適当な布に包めて絞って実の水分を飲む。

布が汚いがこの際どうだって良いだろう。


「ゴクン…うまい」


この一言に尽きる。

少し酸味がありながらも甘味も少しある。

まさにベリージュースといったところだろうか。


さて、食べ終わった事だし次は何をしようか。

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