後ろのだれか

@mia

第1話

 シャンプーで頭を洗っていると髪の毛がずいぶんと伸びてきたのを感じる。

 実家にいるときは伸びてくると母が切った方がいいと言ってくるので、髪よりも母の小言がうっとうしくて近所の理容室へ行っていた。しかし、一人暮らしとなると気にしなくなった。

 会社でも気にする人はいない。他人の髪より自分のノルマ。


 シャワーですすいでいると、シャンプーの泡と抜けた髪の毛が流れていく。それを見ていると、学生時代に友人たちと旅行に行ったことを思い出した。

 

 友人Aがシャワーでシャンプーの泡をすすいでいるときに、友人BがAに気づかれないように後ろからAの頭にシャンプーを垂らしていく。

 Aが、いくらすすいでも泡が無くならないといういたずら。

 残りの二人は、笑いをかみ殺しながら見ている。

 そんなことを思い出していた。


 友人たちとは、たまにメッセージアプリでやり取りしている。またみんなで旅行に行きたいという話も出たが、都合が合わないので実現していない。

 みんな元気かな、などとシャワーですすいでいる今現在思うのは現実逃避だろうか。


 シャンプーの泡と抜けた髪の毛が排水溝のふたに溜まっていく。

 泡は排水溝に流れて無くなっていくが髪の毛が溜まっていく。

 すすぎ終わり泡が無くなっても、シャワーのお湯と髪の毛は流れていく。

 どう見てもひとり分ではない量の髪の毛が溜まっていく。

 自分とは長さも色も違う髪の毛も混ざっている。

 あのいたずらの時は後ろに友人がいたが今は……。


 

 


 


 

 


 

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