第38話 丸々
こんな筈じゃ無かった。
俺は白狼になっていた。真っ白な子どもの狼だ。大人の硬く煤けた触りたくもない毛並みではなく、
ツヤッツヤの産まれたてホヤホヤ、フカフカのモフモフだ。鼻は勿論少しデカいが、もう俺と云えば鼻デカはアイデンティティ。気に入っている。
確かにモフモフは好きだ。
しかし俺がモフモフしたいのであって、決してモフモフされたいのでは無かった。
真っ白な可愛い仔犬のイメージをしっかり持って、魔石の情報を書き換えられたと思う。確かにそうなったが、モフモフを楽しむのは俺ではなく、
ゴブイチであった。
何故もっと考えなかったのか、ワクワクが止まらないままの油断だ。
ゴブリンのジョセフには戻れるのだが、何故か?殺気の様なプレッシャーが俺の変化を頑なに拒む。
ゴブイチとは本当に目に見えて絆が深い、以心伝心で俺が魔石に魔力を込めようか考えるだけで、物凄く機嫌が悪くなる。
そうして俺は、ゴブイチの左手で抱っこされながら今後どうするか悩んでいた。
狼の素材を全て回収して、ゴブシロウとゴブニンとゴブリン達の魔石を探し出し、遺体を焼いた。精神的にかなりきた。いつかはこうなる事は理解していた、しかし実際に起きた時とは全く違って、涙が止まらなかった。もう二度とゴブイチ達を失いたくない。
無理な事は分かっている。しかし、何もしないで、手を拱いてはいられない。
大狼達には申し訳ないが、盾になってもらう。名前は付けない。
今後もそうしていこうと決めた。ゴブイチ達がどう育てるかはわからないけど、俺はゴブリン達の時間稼ぎとゴブシロウの笑顔が忘れられないのだ。
ゴブイチに抱っこされ、少し安心している自分がいる。
ゴブイチが俺を思ってそうしているかはわからないけど、この瞬間が永遠であれと思った。
これから鹿のエリアの探索になる。
確かめないといけないのは、狼のエリアと同じ、プールがあるかどうかだ。
隠れる場所のない戦場であれば、集団の総力戦になる。力の無い者は呑まれ、力ある者も背中を晒してしまえは防ぎようが無い。あのゴブシロウの様に、話を戻そう、まずはプールを守る総力戦となるか?調査して、対策を立てねば、今回の二の舞になるだけだ。
ゴブイチ達は死なせない。
俺は丸まって、考え続けた。
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