第34話 絆
窪地の中心に向かうと木が少なくなり、膝下辺りまである石がまばらに見えた。
その先には背丈程もある岩が、ポツポツと並び、巨大な円を形作っている様だ。これも魔法陣の一種なのかもしれない。
更に目を凝らすと、外周を囲む岩の中央には石畳みのステージがあり、水が湧き出す丸いプールが設置されていた。
丸いプールの奥には、白い小山があったが、多分アレがボスの様だ。
開けた草原に隠れる場所は無く、俺達はゆっくり歩いて進む事にする。
先頭は俺、警戒しても居場所が丸分かりなので、決断の出来る俺が適任だろう。
目的地は丸いプール、暫く掛かりそうなので、俺は目を瞑り、千里眼モドキを発動する。転ばない様に足元に気をつけながら歩く。
土のエレメントには随分慣れていた。武器などを沢山作ったから当然か。
魔力で輝く景色はより鮮明により遠くまで見渡せる様になっていた。
元々魔力が濃くなっていたが、岩が円場に作るエリアは濃密な魔力が渦巻いている。
中央には
ボスと云う者はああ云う者なのだな。
遠目には見えなかったが、至る所に上位種が潜んでいる事がわかった。そしてそれよりも個性の強い個体も三つ感じる事が出来た。
ボスは光の触手を伸ばして、その全てを操っている様だ。魔力が行き
俺もこのゴブリン達のボスだ。俺の後ろにいるゴブリン達を魔力でよく見てみる。
気づかなかったが、微かな魔力の触手で、これはゴブイチだなと、繋がっていた。まだまだ貧弱。
気配や絆など言い表せないモノにも魔力を通して知覚出来る。視覚情報の次元から魔力情報の次元の感覚がシフトしたが、気配など見たいと思わないと見れない次元があるのかもしれない。しかし根源たる魔力はその全てにカタチを変えて俺に伝わる。
今回はボスの生態を知る事で、新たな魔力の可能性に気づいた。
俺の集団をより強くするには、この絆を強くする事。そして俺の魔力を与える事で魔石が変化して、ゴブリン達が強くなる。つまり俺が強くならないと駄目なのだ。
歩みを止め、俺はゆっくりと目を開ける。
振り返り、ゴブイチ、ゴブニン、ゴブサン、ゴブシロウ、ゴブゴロウと順番に見る。その後ろのゴブリン達も確認する。
全員が俺に眼差しを向けている。
土のエレメントに意識を入れると魔力の輝きを感じる。更にこの集団の意識を捕まえ魔力を流す。瞬間、ゴブイチに繋がり、ゴブニン達亜人、そしてゴブリン達とジワジワ波の様に意識が伝わる。
以心伝心。
全ての意識が共有された時、俺を包む魔力が強く輝く、薄かった絆の触手が存在を確かにしてゆく、俺の充分な魔力を仲間達に流し分け与える。仲間達の肉体と精神が癒される、顔つきが変わりやる気が満ちると、俺にゾクゾクする様な、期待、尊敬、愛など様々な感情のエネルギーが帰って来た。
俺は完全に集中している。手に取る様に自分の全てを支配し、知覚し、操れる。音がしない。時が止まる程の完全な集中の域に達する。
ゾーンに入る。
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