第22話 ネイムド
翁、ジョセの執務室、小綺麗に整っている部屋だか、壁一面に本が並んでいる。
こんなダンジョンのゴブリンの城に何故本があるのかというと、神の御告げを編纂する事が、ジョセ翁の主な仕事だからだ。
俺と翁は祭壇から戻って来て、この執務室で打ち合わせをしている。
白濁しているジョセ翁の目を見て、疑問を口にする。
「師匠は目が見えているのですか?」
「もう百年は見えてはいない」
「この本は全て師匠の仕事ですよね」
「そうじゃ、文字は見えんが読む事は出来る。口は達者だから書いてもらえる。それを纏めるのか儂の仕事じゃ、後は待っておれば本が出来るのじゃ」
「いやいや、何故文字が読めるのですか?」
「神のお陰じゃ、神の御告げを頂く様になり、全てに神の陰がある事を知る。この城や机に本や、文字にまで神の陰があるのじゃ」
「魔力と言い換えてみる事は出来ますか?」
「好きにするといい、魔力さえも神のお陰じゃ」
「ありがとうございます」
「ところでお主は儂の内弟子としたが、呼び名を決めねば不便じゃ、本来なら宮使いとして実績を積んでもらうのじゃが、お主は特別じゃ、最初の褒美として儂が付けてやる。有難く思え、これでお主は貴族となるのじゃ」
「貴族になると何か変わるのですか?」
「魔物から亜人格となるのじゃ、知力が上がり、言葉が話せる。魔力が上がり、様々な魔法を操る事が出来るのじゃ」
「めちゃくちゃ大事じゃないですか」
「当然じゃ、名付けは魔石の格にも関わる重大な行為、上位格の力ある者が神の赦しを得て初めて行える。格上げする魔石の同程度の魔力まで使うので、上位格者が死ぬ事もある。無理して恐れ多い名を求めなければ大概大丈夫な筈じゃ」
「私に危険は無いのですね」
「神はある。見ておられる。神は試される。お主は神と共にあるか?」
「はい」
「よかろう、神の名に於いて、ジョセが行う。この者を『ジョエル』名付ける」
足元に魔法陣が現れ、ゆっくりと上がって来る。凶悪な面相のゴブリンマジシャンの顔が知的な赤ら顔に変化する。眼球は真っ白に輝き、瞳は黒く丸まり、眼差し濡れ透き通り、美しかった。鼻はそのままでアンバランスにデカかった。
「なっ、」
「ありがとうございます」
「よっ、よかったな、のじゃ、
サービスして通り名をプレゼントするかの、これは中々に箔が付くぞ!
スペシャルじゃ、そうじゃな、
これからは
『冒険者ジョエル』と呼ぶが良い!!
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