第21話 依頼
祭壇でこれまでゴブリン達は、神から様々な教えを受け取っていた。
明日の天気から、失せ物探し、夫婦の悩みに、子どもの病気、国に関わる重大な決定やダンジョンの環境変化に至るまで、幅広く神の気紛れや親和性の強弱にもよるが、この場で祈ることで御告げを頂けるのだ。
しかし噴水の泉の中に手を入れられるのは資格を持つ神官以上にしか基本許されていない。多くの手による穢れが神との対話を妨げる事を防ぐ為であり、水の流れと専門の係が清掃と管理する事で神との対話が永遠と守られている。
そして泉の底には光り輝くオーブが置かれている。この地の護り神と伝えてられ、直接触れると死ぬらしい。
噴水を設置し、水でオーブと罰当たりなゴブリンを護っている様だ。
祭壇は、壁から流れる水が大人が五、六人入れる丸プールに溜まる一段目と正面から落ちる水が溜まる半円形の二段目で出来ている。両サイドから水は排出され、オーブのあるのは勿論一段目だ。しかしオーブの光りは二段目までも優しく照らし、水の流れに揺られ、この部屋全体を神秘的な空間に変えている。
「確かにこのお告げは様子がおかしいですね」
「主もそう思うか、
儂も長年この祭壇を管理しておるが、こんなお告げは初めてじゃ」
「何年位お告げを受けているのですか?」
「数えるのが馬鹿らしい程じゃ、どうやら儂の歳は七百を越えらしいからな、六百年は軽く越えている筈じゃ」
「流石、最長にして最高位の司祭にして、叡智のゴブリン様ですね」
「そんな事よりじゃ、御告げは曖昧なモノもあるが、神が無意味なお言葉を下さる事など無かったのじゃ、ましてや助けを求める事など、聞いた事もないのじゃ!」
「確かにこれは異常事態の気がします。原因に心当たりはあるのですか?」
「それなのじゃ、お主を呼んだのは、このお告げを受けた朝にお主が運び込まれた事、気候まで操る魔力を持っているやも知らぬ事、お主に祭壇でお告げを受けさす事で何かの糸口が見つかればと思い、連れてきたのじゃ」
「何か糸口は見つかりましたか?」
「あゝ、お主は司祭位の神との親和性を持っておる。これは異常な事なのじゃ、このレベルのお告げを読み解ける者は儂とお主だけじゃ、儂はもう歳だし、死期が間近なのも薄々解っておる。そこで頼みなのじゃが、神の様子を見て来てはもらえぬか?」
「強制なのですか?」
「儂からは言えぬが、事が事なので、そう思って構わないのじゃ、
しかし時間は掛かっても構わない。今すぐどうこうなる話でも無いからな」
「報酬は?」
「この祭壇に関わる者の平和じゃ、出来る協力は勿論させて貰うのじゃ」
「神はどこにいらっしゃいますか?」
「このダンジョンの最下層、
未踏の地じゃ」
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