第6話 魔法
腹が減った気はしたが、干し肉を二口三口食べただけで、いい気がした。
体調はすこぶる良い、そういえば左腕を噛まれた痛みは無くなり、ほんのり赤い跡が残っているだけだった。
思い付くのは魔物を倒した後、吸収した熱気、力の源のようなモノかも知らない。
3匹を倒し、腹の底に渦巻いているモノは確かに活力を自分に与えてくれている。
しかし身体的に力やスピードが向上した気配は無く、あくまでやる気が満ちている感じだ。
疲労は確かに軽減していると思う。そして身体を適度に動かすとゆっくり動き出し、身体を休め静かにしていると魔石に入った時の様なはっきりとした力の感覚と全体的な輝きを感じる。その力を感じているだけで、精神的、肉体的疲労、そして奴等の攻撃を受けたダメージが癒されていく、知覚することだけで効果があり、感覚を拡張したり、大声で威嚇したり、剣で刺すときも随分と精神的に落ち着いていたし、効果も高まっていたように思う。
目を瞑り、腹の底にある力の源を知覚する。膨大な光りのシャワーを浴びているようだ。髪が浮き上がり、皮膚がチリチリとする。そっと左腕の噛まれた傷を意識すると温かな熱を感じた。精神的な恐怖や肉体的な傷が癒やされていく。
死んでいなくなった魔物達の魔石が気になった。深緑色の魔石は少し寂しそうな気がする。
始めの奴なんて、最悪の出会いだった。しかし魔石を使う内に頼もしく感じる相棒のような気がしなくもない。この魔石には愛着がある。そっと取り出して、掌で握り込んだ。
お前に会えて良かったかも、自分とこの魔石、腹の底の力は、本当はなにも変わらないのかもな。
すると少しだけ温かな光りに包まれ、魔石が輝いた気がした。そこには確かな繋がりがあった。
目を開け、他の魔石と並べると鮮やかになった様な気のする魔石が掌にあった。
ふっと溜息をつき、にこりと微笑む、
これはもう魔法でいいや。
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