第3話 魔石
小指の先ほどの輝く石を拾って眺めてみた。
宝石のような石は確かに奴からドロップした。全て目の前で見ていたのだ。
奴が泡と消える中、身体の内側でぼんやりと光、身体が消失した瞬間、支えを失い、ほとりと落ちたのだ。
魂の核。力の根源。命そのもの。
自分にわかるわけない。
そもそも自分はなにものか?なんでこんな場所にいるのか?わからないものだらけだ。
何気なく、この宝石を握り締める。誰に祈る訳でもないが、目を閉じた。
そうすることで救われる何かがあればいい。
先程の戦いを思い出す。奴はなにを考え、なにを求めたのか?
すると魔石に吸い込まれ、魔石の内側入ったような気がした。目を開けると気のせいだとわかる。
今度は慎重に入りたいと思って目を瞑る。膜による境界を感じ、意識だけが魔石に入っている。そうすると感覚が拡張された感じがした。この魔石を通し、この持ち主だった感覚や知覚、個性や技能といったものまで感じる事が出来た。薄目を開けると今までと違う世界が広がっていた。薄暗く見通しの良くなかった洞窟は少しだけ明るく感じ、何か得体の知れないものが蠢いている音がする。すえた土の匂いが鼻をつく、感覚が研ぎ澄まされた気がする。
面白い!これは使えそうだ。
なんだか自分も中身が空っぽだし、この魔石と同じようなものなのかもしれない。
ベルトの腰袋に魔石をしまいあたりを物色する。焚き火以外には特に何もない。一応砂で火を消し、立ち去る事にする。
先程の意識の拡張で感じた蠢きが近づいてきている気がしたからた。また袋小路で戦闘するには不安がある。早く安全な場所で休みたい。
袋小路を出て進むと別れ目になった。なんとなく右に行きたい気がするが、本当にいいのだろうか?
もう一度魔石を使ってみよう。立ち止まって魔石を握り込む。
右にも左にも蠢きを感じた。
しかし、左は数こそ少ないが、強いプレッシャーを感じ、右には同類の安心感を感じる。でも奴の魔石を使った感覚なので、奴の仲間だろう。
歩き出そうとすると魔石からの感覚が切り替わり、地面に着いた足の感覚しか感じない。錆びた短剣を握り締め、右に進む事にする。
一匹づつなら確実に倒せる。様子を見て考えよう!
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