第15話 学園の寮に帰って選択科目何にするか悩みます

その日はおじさんたちの帰ったあと、鍋を煮込んで超特級ポーションかもしれないポーションを100本仕上げた。

上級ポーション、特級ポーションは作り置きがまだ十分にあるし、問題ないだろう。

日曜日は少し薬屋に出て冒険者達に超特級ポーションもどきを売ろうとしたが、中々金貨100枚は売れなかった。


まあ、これは1年は保つし今は良いだろう。


月曜日以降にジルおじさんが50本貰いに来るので、私が王子用とカート用、それに自分の分で20本持っていくから残りは30本。まあ、30本ならそのうちに売れるだろう。


私は日曜日の夕方には乗合馬車で寮に帰ってきた。


明日からはついに授業だ。


授業時間は1コマ90分。午前2コマ、午後2コマだ。授業は必須科目が公用外国語の帝国語2コマ。数学2コマ。化学1コマ。生物1コマ。礼儀作法1コマ。魔導実技2コマ。魔導理論1コマ。詩歌1コマ。歴史1コマ

月曜日だけ4コマ必須が入っている。

その他に剣技、刺繍、料理、世界史、簿記等の選択科目がある。

選択科目は1科目は取らないといけないので、どうしようか頭の痛いところだ。


「リアは選択科目どうするの」

夕食の席でベッキーが聞いてきた。

「うーん、悩んでいる。ベッキーはどうしたの?」

「私は簿記かな」

「そっか、ベッキーのところは商会だものね」

私は納得した。


「ハンナは刺繍よね」

「ええ、リアもどう?」

「刺繍は無理よ。この前の刺繍見たでしょ」

私はオリエンの時の針の刺し傷で傷だらけになって出来たハンカチを思い出した。


「慣れたらもっとうまくなるわよ。好きな人ができたら、それをあげたらうまくいくかも知れないわよ」

「そうかな」

私はカートに刺繍を渡す自分を想像してみた。うん、綺麗にできたら喜んで受け取ってくれるかも。


「でも、リアのあれじゃ、ちょっと無理じゃない」

ベッキーは私の夢を微塵に打ち砕いてくれた。


「そうよね。リアの場合、刺繍より先に手がぼろぼろになるかも」

エイミーも容赦がない。


「でも、血染めのハンカチも良いかもよ」

それホラーじゃん。


「ベッキーも人のこと言えないじゃない」

「あんたよりましよ」

私の言葉にベッキーは反論した。たしかに出来たものは私と一緒であまり褒められたものではなかったが、ベッキーの手は私みたいに傷だらけじゃなかった。


「でも、リアが必死に刺繍した物を王子殿下にプレゼントしたら喜ばれるかもよ」

ハンナがとんでもないことを言ってきた。


「王子はパス」

私が瞬殺したが、


「まあ、第二王子は無理だと思うけど、第一王子殿下はリアに興味ありそうだったじゃない」

ハンナがオリエンでの王子の態度を指して言う。


「たしかに。リアの事は愛称まで知っていたものね」

「そうよね。王子様に名前覚えられているなんて凄いわ」

ベッキーとハンナが言う。


「何言っているのよ。それは私が破壊女だからでしょ」

私はムッとしていった。


「でも、後で3年生の令嬢が話しているのを聞いたけど、王子様が愛称で人を呼ぶの初めて聞いたって」

ベッキーが言う。


「単に私の幼馴染と殿下が知り合いだからでしょ」

私が反論すると


「そうかな。それだけじゃないような気がするけど」

「そうそう、私も3年生のヒューズ侯爵令嬢にあのリアって子どんな子って聞かれたもの」

ハンナまで言う。


「ちょっと待ってよ。侯爵令嬢ってこの学園の女性のトップじゃない。そんな人にまで目をつけられたの」

私は驚いて聞いた。


「あなた今更言う」

「そうよ。昨日は王子と一緒にアボット公爵令嬢とワイト侯爵令嬢を弾き飛ばしていたじゃない」

ベッキーとエイミーが突っ込んできた。


「そうだった。10大貴族のうち3貴族から目をつけられたらやばいじゃない」

私は焦って言った。


「今ごろ言う?」

「それ言うなら第二王子殿下の側近のテレンス様は侯爵だし、第一王子殿下の側近のセドリック様も公爵家だし、あんまりあなたに良い印象持っておられないんじゃない。侯爵家のメルヴィン様は違うみたいだけど」

「半分も・・・・・」

ハンナとヒルダの追い打ちに私は少し青くなった。


「まあ、でも元々打倒王子の鉢巻きするくらいだもの。リアはびくともしないよね」

ベッキーが慰めにならない言葉をかけてきた。


「まあ、そんなに気にしていないけど・・・」

「えっ?」

「やっぱり・・・・」

「はあああ・・・・」


4人は呆れたり驚いたりした。


「そう言えばあんた、王子殿下にポーションブレゼントするみたいなこと言っていたじやない。どうするの?」

ベッキーが聞いてきた。


「そうそう、一昨日ジルおじさんがドラゴンの角くれたから作ったの。明日渡しに行くからついてきてくれる?」

「えっ、王子様はほしいっておっしゃられてたけど、本当にポーションなんて物渡すの」

私の言葉に心配そうにヒルダが聞いてきた。


「ヒルダ、何言っているのよ。リアのお母様は高名な薬剤師の方なのよ。うちなんか仕入れたくてもおろしてくれないほどなんだから」

ベッキーが言った。


「えっ、そうなの?」

ハンナが驚いて聞いてきた。


「そうよ。私も父に話したら、出来たらもらってくれって言われたわ」

エイミーまで言う。


「ねえ、リア、出来たらうちの商会で売らさせてよ」

「うーん、うちの母が商会通すの嫌がるのよね。だからせっかくのベッキーの話だけどそれは難しいかも」

私が申し訳無さそうに言った。帝国の超大手商会とかも頼みに来たことがあるのだが、母は一顧だにしなかった。ベッキーの所におろしたなんかばれたら絶対にその商会が文句言ってくる。下手したら外交問題にもなりかねないのだ。


「まあ私が作った物だからそこまでの価値はないけど」

私が謙遜して言うと、


「そうなんだ」

ベッキーがあっさり引き下がったので、それはそれで少しムカついた。


「でも、半人前のリアが作ったものなんて第一王子殿下にお渡しして良いものなの」

ヒルダがまた心配して言う。なんか私にとても失礼な言い方だ。けど、あまり私の薬屋のポーションは私が作っているという家の内情を知られるのもよくないので、ここは黙っていようと思った。


「まあ、いらないって言うなら、他の皆に渡すから」

私は適当に笑って言った。

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