夢 —道―

野中 めい

目が覚めると私は真っ暗な空間にいました。

前後左右どこを見ても暗闇が広がっています。

不思議なことに恐怖感はなく、なぜか前に進まなければという強い使命感のようなものがありました。


夢の中にいる感覚は勿論あります。

しかし、よく言う明晰夢のように、飛んだり別の場所へ行ったりなどはできないようです。


歩き進めると次第に目が慣れていきました。

何もないと思っていたそこは、舗装された道路でした。

しかし見えたのは道路だけで他には何もありません。

上を見上げてもどこまでも闇が広がっているのみです。

進むべき道があるだけでも良しとしよう、そう思って私は歩みを進めました。


30分、1時間、もしくはそれ以上、歩いていますが一向に疲れる気配はありません。

しかし試しに走ってみると、疲れはしないものの息が切れるという感覚はありました。

息が切れている間、私は何とも言えない恐怖心にかられました。

それが疲れによるものなのか、息苦しいからなのかはわかりません。

単純に怖いとだけ思いました。


それかまたしばらく歩き続けました。

舗装された道を延々と。

途中道を外れようともしましたが、なぜかそちらに行ってはいけないと私の中の何かが警鐘を鳴らしたのです。

私は恐る恐る手を差し伸べ確認してみました。

そこに地面がない代わりに、何かドロッとした液体があるのみでした。

掬ってみるとそこには何もなく、その液体のようなものはそこだけしか存在できないようでした。


ふと私はカバンのようなものを持っていることに気づきました。

ショルダーバックということは認識できるのですが、色や形などはまったくもってわかりません。

中を探ってみるとそこには一冊の本がありました。

これで少しは退屈しなくて済むだろうと思いましたが、開いてみると中は白紙のページが広がっているのみでした。

肩を落としながらもう一度カバンを探ってみると、今度は一本のペンがありました。

古びた万年筆、なぜか私はこれを懐かしいと感じました。


私はここまでのことをその本に書こうと思いました。

書こうとしたものの、なぜか最初から何ページかは文字が書けませんでした。

文字が書けないというより、書こうとすると勝手にページをめくり始めるのです。

ようやくかけると思った時には本の真ん中あたりまで来ていました。

不思議に思いながらもとりあえず今までのことをしたためようと思いました。


気づいたらこの場所にいたこと。

自分が舗装された道を歩いていたこと。

走ったらとても苦しくて、とても怖かったこと。

道の外はドロッとした液体があったこと。

しかもそれはそこにしか存在しなかったこと。

カバンのようなっ物を持っていたこと。

中には白紙の本とペンがあったこと。

なぜかこの万年筆を見て懐かしいと感じたこと。

そして今これを書いていること。


そこから先は自分自身に対する質問などを書いていった。


自分が誰なのか、どこに住んでいるのか。

家族や恋人はいるのか、友達はいるのか。

そしてなぜここにいるのか。

この万年筆は誰のものなのか。


書いていくうちに私は泣いていることに気づいた。

なぜ泣いているのかはわからない、しかしそこには何とも言えない悲しみがあった。

何か大事なことを忘れているような、しかし何を忘れているのかわからない。

気づくと私は声をあげて泣いていた。周りに人がいない事をいいことにわんわん泣いた。

泣いている理由は私には理解できなかったが、ひたすら泣いた。


しばらく泣いていると突然疲労感に襲われた。

泣きつかれた赤子のようにそこに横になり、瞼が重くなる感覚を覚えました。


あぁ……眠い……

とてつもなく眠い……

そうだ、少しだけ寝てしまおう……

どうせここには私しかいないのだから……


パタン……

私はこの本を夢の中に持っていこうと思いました。

私は本を大事に抱え深い眠りにつきました。


深く、深く……

どこまでも沈んでいくような感覚に襲われながら、私は眠りにつきました。


D.C.

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夢 —道― 野中 めい @nonaka_mei

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