あちらの世界

ソーダ

あちらの世界

雨が降った後、水溜りの中にあちらの世界が上下逆さまに映っていた。

大学生でロングにした私の姿は、水溜りの中に立っている足元から逆さまのあちらの世界に繋がり、黄色い子供の長靴を履いた脚からランドセルを背負った小学生の姿として映っていた。

あなたは誰?


向こうもこちらを覗いている。


まるで私の小学生の頃の姿のフリをして、そんな丸い顔立ちじゃないし、目も切長で、明らかに違う。


車が来たので避けた。

水溜りをタイヤが蹴散らして無くなってしまった。


おかしい。


向こうの水溜りまで走った。

水溜りの中に踏み込むと女の子も踏み込んだようだ。水溜りが小さ過ぎる。よく見えない。


大きい水溜りがもっと向こうに見える。

私は走って行く。

そして水溜りに立つ。


女の子は一足遅れてやって来た。

彼女は驚いていた。


女の子は言った。

「あなたは誰?」


私がさっき言った言葉と全く同じに唇が動き、聞こえない音声がはっきり感じられた。


私は水溜りの中に手を突っ込み脚を掴んだ。

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