デリバリー・ホラー・ショー

小山ヤモリ

プロローグ

 大抵の心霊現象には理由がある。


 心霊写真、ポルターガイスト、金縛りに祟り、呪い。

 一昔前までは心霊ブームだのなんだので、テレビや雑誌が挙って心霊特集なんてやっていたものだ。

 といっても、くだらないテレビレポーターやタレントが、何故か小奇麗な廃病院や番組用セット丸出しの謎の施設に出向いてはギャアギャアと金切り声をあげ「幽霊が出ました!」なんて叫ぶ、つまりそういうやつだ。

 そしてテレビではその幽霊が出たであろうそのシーンを何度も何度も何度も何度も巻き戻しては「お分かり頂けただろうか?」と、恐怖心を煽りたいのか笑わせたいのか分からない低い声のナレーションが視聴者に語りかけてくる。そしてさらに、さらにだ。

 霊能力者と名乗るあきらかに怪しい厚化粧のおばさんが登場し、これもまた怪しい呪文だか念仏だかを唱えながら、そこにいるらしい幽霊と戦ってみせる。とんだ茶番だ。

 はたして当時、このくだらない茶番劇を本気で信じていた人間はどれくらいいただろうか? テレビの向こうで「お化けがー! 幽霊がー!」と泣き喚く女も、何故かスタジオ内を逃げ惑う男達も、きっとギャラを貰っているからこんなことに付き合うのだ。

 これをもし彼らが本気でやっているのだとしたら、もはやただの阿呆だろう。


 とにかく、だ。


 大抵の心霊現象には理由がある。

 現に今では一時期に乱立していた心霊写真や心霊映像も、うまいこと作られた合成であったり、光の反射や偶然でできたものだと証明されているし、数々の幽霊(?)と死闘を繰り広げた厚塗り霊能力おばさんもいつの間にか消えてしまった。

 ポルターガイストも金縛りも、日頃の心労やストレス等が原因だ。

 祟りも呪いも幽霊の目撃談も、人間の思い込みや病気か疲労による幻覚が原因なのだ。



 心霊現象なんて嘘。

 大抵はくだらないやらせに過ぎないのだ。

 そう……大抵は、ね。

 なら、もし『本物』がいたとしたら? 『本物』と出会ってしまったら?


 その時は……


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