雨が広がり、暗闇が降り注ぐ。そんな中、俺は君と出会った。
りょあくん
1
出会いが欲しい――
俺がそう思い始めたのは3ヵ月ほど前からだろうか。
高校入学と同時に家を飛び出し、独り暮らしをしていた俺は、格安のアパートを借りて、生活費を稼ぐため毎日アルバイトを頑張り、学校では成績上位にいるために必死に勉強をする。
そんな生活をしていたため、疲れてしまったのだろう。心の支えが欲しくなってしまったのかもしれない。
日々、出会いを求める気持ちが増加していき、気持ちを抑え込むのが難しくなっている。
気がつけば、勉強中に出会いのことだけを考えている時があり、勉強が進まないことがある。
日常生活に支障がでてしまっている現状を改善しない限り今後、俺は大変なことになってしまいそうだ。
そんな、危機感を持ちながら今日もアルバイトを終え、夜の暗い道を一人寂しく歩いていた。
という、思春期男子の典型的な例のような生活をしている俺なのだが、不思議なことに現在進行形で女の子が俺のアパートのシャワーを利用しているのであった。
シャワーの音が部屋全体の空気を振動させているなか、俺の心臓はその倍以上の大きさで鳴っている気がしていた。
自分の理性が壊れてしまわないよう、必死に抑え込む。
俺は、彼女を考えないようにしようとするが、余計に考えてしまう。
自分よりも一回り小さい身長、自分と同じ高校の制服、サイズが小さいらしく、少しピチピチでボディラインが分かってしまう容姿。
「あぁ、駄目だ。」
俺は、そう呟き顔を横に降った。
そして、他のことに集中しようと思い、机に座って勉強道具を取り出した。
だが、ふと冷静になった俺は何故、彼女がここいるのか整理してみようと思った。
本来ならもう暑いはずだが、雨が降る日が増えてきた、とある7月の夜。
いつものように、本日の授業の復習をしながらアルバイトから帰ってきていた。
今日は、少し早く帰ることができそうなので、料理をしようと考え食材を買っていた。
今日は、何を勉強するか。
そう考えながら帰るなか、公園の横を通りすぎようした時、俺はある光景を見た。
公園の灯りの下のベンチで、教科書を広げ勉強をしている女子高生だ。
だいぶ、遅い時間に一人で公園にいる女の子が心配になった俺は、一度は通りすぎるが公園に戻ってきた。
そして、俺はその女の子に話しかけた。
「どうかしたんですか?」
しかし、女の子からは全く返事が返ってこない。
「家の鍵なくしちゃったとか? 親と喧嘩したとか?」
俺が、ここまで心配するのは女の子に対して良い人アピールしたいのかもしれないが、この女の子が来ている制服が同じ高校のものだったのがあるかもしれない。
俺は、返事がなかったことに少し傷ついた。話しかけなきゃ良かった、とも思った。
しかし、彼女は三日に一回のペースで公園に姿を表していた。
その度に、何故か俺は声をかけていた。
そんな生活も二週間程経過した。
今日は、予報が大きく外れ、予想以上の大雨だった。
アルバイトしている店の店長から傘を貰ったのだが、常にリュックの中に折り畳み傘を持っていたため、少し罪悪感を感じながらも、大雨の夜道を歩いて帰っていた。
いつもの公園まで来た俺だったが、ふとあの女の子が気になった。
この大雨の中、あの人はいるのだろうか。
俺は、確認するために公園へ立ち寄るが、あの女の子はどこにもいなかった。
ホッとした気がした。
このまま、俺は公園を立ち去ろうとするが何かが木の裏で動いた気がした。
恐る恐る見てみると、あの女の子がいた。傘もささずに。
ビショ濡れになっている彼女は、着ている服が透けてしまっていて、うっすらと下着が見えてしまっていた。
俺は少し動揺したが、それどころじゃなかった。
雨によって体温が奪われてしまっている彼女は、小刻みに体を揺らしていた。震えが止まらないのだ。
俺は、いつものテンションで彼女に話しかけた。
リュックから折り畳み傘を取り出し、その折り畳み傘を自分に使い、今自分が使っている店長から貰った傘を彼女に渡して。
彼女は、やっと気がついたようだった。
目があったのでもう一度話しかける。
「大丈夫?」
彼女の目は何故か赤くなっている。
泣いていたのか――
雨のせいなのか――
彼女が何故ここにいるのか、俺には分からない。
でも、今の彼女には他人に踏み込んでほしくない事情があるに違いない。
そんな彼女に、今の自分に何ができるかを考えた。
体を冷やしてしまっている彼女に追い討ちをかけるかの如く、少し強めの風が吹いた。彼女の、震えは更に大きくなった。
今、彼女に必要な場所は、体を暖める場所。
雨に打たれる心配もなく安心できる場所。
変な気持ちがあるわけではない。
ただ、純粋に彼女を助けたいと思った。
そのように考えると、俺はふと口に出していた。
「うちに来る?」
またしても、やってしまったぁ、と後悔する。
この表現では何か誤解されてしまう。
そう考え、誤解されないように訂正をしようとしたが彼女が先に口に出していた。
「い、いいの?」
俺は、驚いた。
今まで一言も返してくれなかったのに。
だが、また風が吹き、震える彼女にタオルを渡し急いでアパートへ案内した。
そして、今に至るのだった。
経緯を整理していると、いつの間にか時間がたっていたらしく、女子高生がシャワーから出てきた。
俺は、彼女に背中を向けていたが、ゆっくりと彼女の方を見た。
俺の家に女性用の服がある訳がないので、現在の彼女は俺の服を着ている。
「さ、サイズ大丈夫だった?」
声を裏返しながらそう聞いていた。
顔が暑くなっている気がする。
「み、見たら分かると思うんですけどサイズあってないです。
で、でも大丈夫ですので、心配しないでくださいっ!!
あっ、下着まで濡れてしまったので乾かさせてもらってます。
少し、下がスースーしてしまいますけど...」
ってことは......今、女の子って下着を着けてないってこと......???
俺は、自分の理性をふっ飛ばしてしまいそうになった。
しかし、すぐにその理性は自分のもとに帰ってきた。
もっと、重要なことがあるはずだから。
俺は、彼女のことを全く知らない。
名前も分からず、年齢も知らない。
ただ、分かっていることは、彼女は俺と同じ高校ということだけだ。
俺は、ずっと立っている彼女を手招きし自分の向かい側に座らせた。
俺が彼女を知らないということは、彼女も俺のことを知らないのだ。
まずは、自己紹介することが大切だと思った。
「俺の名前は、森といいます。
一年八組です。
よろしくお願いします。」
俺は、そう言うと深く頭を下げた。
すると、彼女も慌てて頭を下げた。
「私の名前は、山本っていいます。
えっと、その......
......、一年一組なんですけど......私ってブスでクラスでもあまり友達がいなくて、特徴もなくキモいやつですけど、助けてくれて感謝しています。
あのままでは、どうなっていたが分かりませんでした。
ありがとうございます。」
「いやいやいや、山本さん可愛いから。」
「そ、そんなことないです!
親からはブスってよく言われてますし......」
彼女は、そう言うとしばらく喋らなくなってしまった。
俺も、何と言ってあげれば良いのか分からず、ただ黙っているだけだった。
こうして、少し気まずい時間と空間が過ぎていくが、ここで彼女は何か覚悟を決めたような表情で、その口を開けた。
そして、彼女は衝撃の言葉を発した。
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