夢霞

小倉さつき

夢を見た

夢を見た。

視界を覆うほどの薄桃色の霞が、

夜闇の中を舞う景色だった。

遠くの岸には、ここからでもわかるほどの

桜の大木が見えていた。

霞のような花びらは対岸から運ばれているようで、

大桜はゆらりゆらりとおぼろげな輪郭をしていた。

薄桃で包まれた空間には、

ひとつだけ際立つ色があった。

蒲公英のような、黄色い花があったのだ。

黄色い花は、大きな体をゆらりゆらりと

揺らしながら、静謐に佇んでいた。

私は花の傍らに横たわり、目を閉じた。

耳を傾ければ、ざわざわとした音が聞こえてくる

枝同士が擦れて、奏でる音楽。

その旋律に身を委ねていれば、

いつしか、意識も霞がかって、

そこで記憶は途切れた。

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