赤き流星・真田幸村列伝《激闘編》1/3部作目

龍玄

第1話 奇想天外、攻めの籠城戦法。

 真田家と深い関係にあった武田家が、織田信長に滅亡された。その信長も本能寺の変で明智光秀により横死。動いたのは北条家。織田家から旧武田家臣を支配下としていた滝川一益を神川の戦いで倒す。

 幸村の父・真田昌幸は北条家の動きに直様、反応し、参謀として矢沢頼綱を置き、若干十七歳の長男・信幸を沼田城に向かわせた。軍勢は八千。信幸は北条家の手に落ちた手子丸城を巧みに攻撃し、一日で奪還した。 


 「大義じゃたな信幸」 

 「父上の真似を致した迄で御座います」 

 「これから、我らの勢力を拡大する。そのためには何としても、武力・武略に優れた旧武田家臣を手に入れようぞ」


 昌幸は、有能な兵力と結束こそが勝利の鉄則と考えていた。

 その頃、真田家付近の甲斐・信濃は、空白地帯となっていた。その地を巡って、北条氏直、徳川家康、上杉景勝が争っていた。

 当初、真田家は上杉影勝に臣従していた。しかし、北条勢が旧武田家臣を支配下にしていた滝川一益を倒すと、昌幸は北条家の臣従となった。その北条家は、和睦を条件に旧武田家臣を勢力を伸ばす家康に引き渡してしまった。昌幸は、旧武田家臣を追随し、徳川家に臣従する。昌幸は、武田家への尊敬の念と家臣の優秀さを誰より知り、欲しかった。徳川家と北条家は、婚姻によって関係を強化。北条家の力が強まれば、一時期、敵となった真田家の領土も失うかも知れない。そう考えた昌幸は、上杉景勝に臣従する。上杉景勝は関白豊臣秀吉に臣従していたことから、真田家も豊臣傘下に入ることになった。昌幸の懸念は現実になった。北条家は、家康にある条件を出していた。


 「小牧・長久手の戦いに参戦するに当たって、お願いが御座る」 

 「何なりと申されよ」

 「真田家に奪われた沼田領を、北条家に戻して頂きたい」

 「あい、分かった」 


 家康は「真田家だと。どこの少子者よ。そのような者を何とも出来ぬとは、何と弱気なことよな」と内心、笑っていた。こんなことで恩義を売れるなら、「棚から牡丹餅より容易いわ」と思っていた。

 ならば、大軍を向かわせ、徳川の威厳と逆らう事の恐ろしさを天下に知らしめる良き機会ぞ、と考え、北条家の申し出を承諾。家康は直様、鳥居元忠、大久保忠世、平岩吉ら七千を信濃に派遣し、国分寺に陣を構えさせた。これに対し真田勢は、上田城に昌幸ら七百、砥石城に信幸ら三百、矢沢城に矢沢頼康ら二百の計千二百名。


 「数では太刀打ち出来ぬ。なれど我らには秘策がある。目に物をみせてやるわ」 


 昌幸は、庄屋や町衆の代表格を上田城に呼び寄せた。ただ、敵方の目を配慮し、普段のままの出で立ちで来るようにと要請した。即効性があるのは昌幸らが出向くこと。それでは、忍びの者に話を聞かれる恐れがあった。ならば、城内の方が安全かつ秘密を守れると昌幸は、考えた。 

 真田家と民衆との仲は、頗る良好だった。真田家に仕える武士たちは当主・昌幸同様に皆、気さくで、身分の垣根を超えた交流を持っていた。家臣たちもお互いを信頼し、我先に争うようなことはなかった。昌幸の呼びかけに民衆が次から次へと、着の身着のままの様相で城の門を潜っていった。民衆は、次々に大広間に通された。

 その頃、北条家の依頼を受け、真田家の領地を奪おうと家康の指示を受けた徳川軍七千名が上田城を目指していた。

 

 「こんな恰好で本当によかったのかの~」 

 「もぐさの匂いのする畳が汚れやせんかと、腰が落ち着かねぇだ」


 そわそわする民衆が、一瞬静まり返った。昌幸が現れたからだ。


 「いや~皆の者、急に呼びた立てて済まんのぅ」 

 「何事で御座いますか、お殿様」

 「皆に集まって貰ったのは他でもない。北条家の依頼を受け、徳川の大軍が我らの領地を奪いに来るということを伝えようと思うてな」

 「徳川って、あの家康がか」 

 「そりゃ~大変なことではないべか」

 「そうじゃ、大変なことじゃ」

 「大軍ってどれくらいじゃろ」

 「そうさな、五千~八千、いやそれ以上かもな」 

 「ひ、ひ、ひぇ~、そんなに…」

 「まともに戦っては、勝てはせぬわな」

 「どうするだ、降参すんのか」

 「降参したいか」

 「いやだとも、折角いい関係を築いてもらっているのに、また、びくびくすることになるで、そんなの嫌だ嫌だ」

 「きっと、無理を承知の取立てを言うてくるに決まっているだ」

 「そうさなぁ、それだけは、受け入れられねぇ」

 「何とか出来ねぇのか、お殿様」 

 「皆の気持ち、有り難く、受け取った。ならば、我らに力を貸してくれ、どうじゃ」

 「そんなの当たり前じゃね~か」

 「どうせ、徳川の大軍が攻めてくれば、町は壊される。火を放たれて、焼き野原にされかねぇ」

 「そうださ、そんなのを黙って見過ごせねぇ」 

 「でもよ~、そんな大軍を相手にどうすんだべ」

 「そうだな、皆、思ってくれ。ここに満面の水を溜めた水瓶がある。これをひっくり返したら、どうなる」

 「そらぁ、水は勢いよく流れ出て、止められねぇだ」 

 「そうだな、それでは皆が好きな酒樽はどうだ」

 「栓を外して、好きなだけ、酒を取り出せる…」

 「そうか、町を水瓶に見立てて、大軍を少しづつ入れさせれば」 

 「ほぉ、よう、わかったのぉ。その通りじゃ」 

 「大軍とて、元を正せば一人一人が寄り集まったものだからの」

 「それで、わしらは、何をすればいいんだ」 

 「では言うぞ、よ~く聞いてくれ、時は迫っておるでな。城下に戻ったら皆に伝え、しっかり、働いても貰わねばならぬからな。われらの領地は皆の働きにかかっておる故にな」

 「分かっただ、で、どうするだ、何でも言ってくだされ」

 「まず、大工の心得のある者、力自慢の者をできるだけ集めてくれ」

 「それから、どうすんべ」 

 「皆の者には悪いが、城下町を火の海にするやも知れん」


 昌幸の言葉に町の衆はざわめいた。 


 「聞いてくれ、徳川が火を放つやも知れん。大事な物は事前に運び出しておいてくれ。被害を受けた家屋は、全部といかぬ迄もできるだけ、この昌幸が責任を持って建て直す故」

 「そんなこと…、戦いになれば、どっちみち壊されるのは関の山。どうじゃ皆の衆、お殿様を信じようじゃないか」

 「うんだ、これはわしらの暮らしを守る戦いじゃ」 

 「忝ない」

 「でも、何としても勝たなければ、話は始まねぇぞ」

 「時が来れば知らせる故、直様、女・子供、年寄りを安心できる場所へ逃がしてくれ」

 「分かっただ、皆を納得させるだ。それで、男たちは何をすればいいですかいの~」 

 「大工の心得のある者を中心に、力持ちの協力を得て、こちらが指示する場所に柵を設けてもらいたい、急いでな」 

 「こりゃ、木材がいるの」

 「どうせ燃やされるやも知れん。柵となる木であれば見てくれなど、どうでも良い、丈夫でさへあればな」

 「すぐに取り掛かかるだ」

 「できるだけ早くにな、敵は直ぐにでも来るやも知れん」

 「分かっただ」

 

 昌幸は、指示と図面をおさたちに見せながら説明した。


 「まず柵を作る。配置はこの通りに。柵の高さは、跨げない程の高さがあれば充分だ。柵の升目幅も人一人が通れるか否かの粗さでよい」 

 「これなら、楽に作れるだ」 

 「要は、侵入を妨げられればよい。ただ頑丈にな。ひと蹴り、ふた蹴りで倒れぬようにな」 

 「分かっただ」

 「柵と同時に、神川上流に堰を設けて水を溜めるのじゃ。その堰は、合図とともにすぐに決壊できるよう細工を施してな」

 「それも分かった、あと、何かあるかね」

 「あとか…我らが勝つことを祈って貰おうか、あはははは」


 昌幸は、豪快に笑ってみせた。町の長たちも、絶対的に不利な戦いにも関わらず、昌幸の自信が取り憑いたかのように、やる気に満ちていた。昌幸は、敵の正体に怯えるのではなく、その敵にどう立ち向かえるかを考え伝えた。そこに一体感と光明を見出していた。


 「では早速、戻って、わしらは仕事に取り掛かるだ」

 「くれぐれも内密にな、難しければ…、知らぬ者に何をしているのかと聞かれれば、そう、祈祷師のばあさんから大風が来る、とお告げがあった、とでも言っておけば良かろう、では頼んだぞ」

 「風の噂ならぬ、ばあさんのお告げか、それは面白れぇ…ならば、皆を逃がすのも、鬼が来るとでも言っておくだ」

 「それはいい、頼んだぞ、皆の者」

 「お~」 


 掛け声勇ましく、町の衆は上田城を後にした。早速、町の長たちは、昌幸の求め通り人員を集め、逃げ場所を決め、昼夜を惜しんで作業に取り掛かった。昌幸の図面通り、城下町のあちらこちらに柵を交互に築いた。頑丈な柵作りには時間を要した。


 「親方、穴を掘って杭を打つのは、時がかかりますだ」

 「そうだな…殿様は、敵を足止め出来ればいいと…そうだ、竹だ竹。竹槍をさせばよか。こんたらば容易に蹴れまいて」 

 「それはいい、竹槍を柵に頑丈に括り付けるだ」 

 「それなら、簡単だ、すぐに取り掛かろう」

 「お~」


 町の入口から、城までの途中に柵が九十九折に設けられた。一方、神川上流の堰も、縄を切れば決壊するように仕掛けられた。女、子供、老人は、山合いの寂れた寺に避難させた。こうして、徳川の大軍を迎える準備は、昌幸の思惑通り着実に、具体的な物となっていった。城下町に配した柵は、異様な町並みを醸し出していた。神川上流の堰もその時を待っていた。住人の避難も終えた。徳川軍を迎え撃つ準備は、整った。


 「では、参ろうか」 


 昌幸は、手筈通り上田城から二百の部隊を出した。


 「あ、あれをご覧くだされ」


 国分寺に陣を取る七千の徳川勢の前に真田軍が現れた。


 「多勢でご苦労なこった、腰抜け共めが~」


 真田軍は、徳川軍を小馬鹿にして挑発した。 


 「奴らは何を考えておる、我らを見下しに参ったか。ならば、応えてやれ、皆の者、まずは奴らを血祭りにあげ~」 


 徳川軍は少数の部隊を見て、注意力を軽視した。二百の部隊は、昌幸が罠に誘き寄せる、囮だった。鳥居元忠の号令と共に一斉に、大軍は真田隊に襲いかかった。囮隊は絶妙の距離を保ち「腑抜け共めが、鬼さんこちら、あはははは」と、挑発しながら、城下町へと誘い込んだ。戦果を欲する大軍が動くのを見届けると「ふむ、引っかかりよったわ、引け~」と、速やかに城へと真田軍は撤退した。


 「恐れをなして、城に逃げ込みよったわ、口ほどにもない奴らが」


 徳川勢の大軍は、城下町に流れ込んだ。 


 「なんだ、この貧弱な柵は。馬鹿にしよって、構わぬ、行け~」


 鳥居元忠の号令に、昌幸と町人が配した柵に徳川の大軍が、先を争うように突き進んだ。しかし、九十九折の柵によって、たちまち先頭が団子状態に。後続は先頭のことなど知らず、押し寄せて来る。


 「押すな~」

 「何をしている、早く行け~」


 苛立ちが罵声となって、響き渡っていた。大軍は見事に行き詰まった。それでも、少数は柵を通り抜けていた。その柵の行く手の折々の物陰に、真田軍の民兵が潜んでいた。通り抜けてきた分散された徳川兵を民兵たちは次々と襲い、倒していった。

 七千対千二百の戦いのはずが、多勢の真田隊らと、少数の徳川兵の図式と変貌していた。先頭が真田隊と戦う。その戦いで足が止まり、後続が行く手を阻まれ、行き詰まる。まさに昌幸が描いた策が、ここに成果を見せていた。しかし、数に勝る徳川軍は力技の如く、民兵を蹴散らし始めた。この戦況を昌幸は、小高い所から見ていた。


 「見てみよ、先を急ぐ大軍が、柵に妨げられ、右往左往しておるわ。もう、良かろう、次の手を打つぞ。兵に退却を命じよ」


 昌幸の指示によって、花火が打ち上がった。その合図を受けて、真田家の兵が号令を発した。


 「引け~、引くのじゃ」


 先頭で戦っていた民兵ら真田隊は、一目散に城や事前に確保していた隠れ場所へと身を隠した。

 進み辛い柵には、もうひとつ仕掛けが施されていた。それは、柵に巻き付かれた藁だ。柵の高さを補う為、目隠しの目的もあったが、それだけではなかった。真田家は、甲賀や伊賀とも通じていた。その知識は、陰陽道にも劣らないものだった。風が、強く吹いていた。この風も、作戦遂行に必要不可欠な現象だった。


 「今だ、火を放て~」


 号令と共に火槍や付火で城下町は、更なる混乱の渦の中へ巻き込まれていく。住民たちは事前に避難させていた。放たれた火種は、油を染みこませた藁に引火。壁だった柵は火種を得て、火鍋の様相を呈した。 


 「引け~」

 「進め~」

 「どけ~どけ~」


 急に襲われた蟻たちのように、逃げ場を求めて徳川勢の兵たちは秩序を失い右往左往。怒涛とも罵声とも聞き取れる悲鳴が炎に溶け込んでいった。藁は火の粉と化して容赦なく兵たちを襲った。灼熱は判断力を削ぎ、煙は視界と呼吸を奪っていった。

 徳川勢は紅蓮の炎に包まれ、逃げ惑った。逃げ場を追い求めた兵たちの視界に、川らしきものが…「川だぁ、川があるぞ~」その声に兵たちは、一縷の望みを託した。火の粉を払い、目を凝らして、今の苦しみから逃れるため、一目散にその川を目指した。川と呼ぶには、余りにも浅瀬だった。その川に兵たちは、熱と煙から逃れるため、一目散に飛び込んだ。その時だった。


 パバババーン


 乾いた銃声が夕方の落雷の如く、鳴り響いた。動きを削がれた徳川勢に、容赦ない銃弾が。それでも、我先に炎から逃げようと、神川に多くの兵たちが水を求めて、川に飛び込んでいた。炎から逃げ惑い、町中を彷徨う者、銃弾を逃れ、熱を冷まし川から辛うじて上がってきた者に、更なる不幸が降り注ぐ。 

 真田家臣に、民家に隠れていた農民兵も加わり、無力化した徳川勢を次々と仕留めていった。それをも逃れた徳川勢の兵たちは、川へと群がった。それを見て、真田隊の家臣が「宜しかろう」と号令を掛けると、一筋の火の玉が天へと伸びた。花火など徳川勢は気にも止めなかった。本来なら、柵に火を放たれる時も、花火が上がっていた。冷静であれば、何かが起こる気配くらいは感じ用心していただろうに。今はそんな注意力さへ、どこ吹く風。


 ゴゴゴゴゴ…


 地響きと共に、迫ってくる轟音が鳴り響いてきた。上流で水を溜めていた堰を一機に壊したのだ。川に入り、一時的に難を逃れた兵たちの動きが止まった。


 「何だ、何の音だ、何が迫っている」


 川に逃げ込んだ兵たちは一瞬、時間が止まったように思えた。音のする上流を不安視する兵たちの足元の水嵩が一機に増して行った。見る見る川は、濁流と化し、増水していった。

 大軍で押し寄せていたため、兵たちは容易に戻るに戻れない。兵たちの混乱を嘲り笑うように濁流は、兵や馬を飲み込み川下に消し去っていった。辛うじて岸辺に辿り着いた兵たちも、痛手を負っていた。それは、川の堰止め工事の際、堰止めを担当する家臣のほんの思いつきだった。「余った丸太や木片を川下に捨てよ」その思いつきが、功を制した。濁流となった水の勢いは、丸太や木片を凶器に変えた。川の流れで勢いと、不規則な動きを手に入れたゴミの山は、徳川勢にとっては防ぎようのない強力な兵器と映っていた。精根尽きた様相で、何とか岸辺に辿り着いた兵たちを入れ食いの釣り場のように真田勢は、一機に仕留めていった。


 「してやられたり…ここは引け~引くのじゃ」


 鳥居元忠は、絶望感と腸が煮え返る思いで、退却の指示を発した。徳川勢の戦死者は、千三百を超えた。失意の徳川勢は、そのまま浜松に撤退した。真田勢の損害は、多く見積もっても四十程だった。


「徳川、破れたり」


 真田隊は、大いに盛り上がっていた。昌幸、恐るべし。徳川勢の敗北は、即座に天下に知れ渡った。「あの徳川が、名の知れぬ田舎侍に負けた。天下の笑い者だ」と噂が噂を呼び、家康の権威に大きな影を落とした。 

 無名だった真田家は、その功績が認められ、独立した大名とし、一目置かれる存在となった。


 家康は、窮地に追い込まれていた。


 一度、失墜した権威は、容易に回復などしない。そうそう、世間が注目する戦いなどない。家康は、完全に汚名返上の機会を失ったことに困惑していた。 

 家康は噂の呪縛から逃れるため、身を潜める策を得る。「噂を止める訳にはいかぬ。ここは体制を立て直し、今一度、自らの権威を響かせよう。そのためには、誇りなど捨て、寄らば大樹の蔭。秀吉に屈服する形で家臣となろうとも権威回復の時を待つのが最善の策」と家康は、考えた。豊臣秀吉は、自分の傘の下で権威失墜を凌ごうとする家康の心を見透かしていた。


 「家康めが…そう思い通りに活かすものではないわ」。


 秀吉は、家康の不穏な動きを封じ込めるため、敢えて遺恨のある真田家を徳川家康の与力大名に命じた。家康と昌幸の和解に秀吉が尽力したのは、有力な大名を傘下に治めるのが目的であり、秀吉政権の安泰を意味していた。 

 真田昌幸は上杉景勝を通じて、既に豊臣秀吉の臣下に入っていた。徳川氏の与力大名となり、和解の証というべき婚姻が成立した。家康は、上田の戦いで「敵ながら天晴れ」と、真田家の嫡男・信幸の才能を高く評価していた。家と家の繋がりは、強き絆となる戦国時代。才能のある武将は、喉から手が出る程欲しかった。

 家康は、和解をいいことに昌幸の嫡男・信幸に目を付けた。家康の養女となった本多忠勝の娘である小松姫を信幸に輿入れさせ、真田家との関係強化を目論んだ。これによって真田宗家は、複雑な立場に置かれた。豊臣の家臣である真田昌幸と二男・幸村(信繁)の上田城と、徳川の与力大名である嫡男・信幸の沼田城の二家体制となった。


 後に幸村は、秀吉の「既定の方針」を受け、石田三成と共に「のぼうの城」に参戦する。利根川を利用し、総延長28kmに及ぶ石田堤を建設。堤を決壊させ成田城を水の孤島とする真田家の戦術を大掛かりにしたものに出会う。幸村は、不可能を可能にする意志に共感を抱くのだった。


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