銃を頂きました

黄金林檎

始まりの地

第1話 導入

「改めて聞こう。君のやりたいことは何だ?」

その問いかけに、

「本物の銃を使ってみたいです」

と答える。あぁそうだ、まずは経緯を話さないといけないな。


 私の名前は江口一太郎、22歳の警備隊員だ。初めてあった人には『えぐち』と呼ばれるが正しくは『かわぐち』だ。友人たちから某ワープロソフトからとってスマイルと呼ばれている。いつものように現場での誘導中、突然の浮遊感に襲われ目に前に半裸のおっさんがいた。


「やぁ少年。君のやりたいことは何だ?」


 開口一番これである。まずは状況説明をしてほしいものだ。


「あの、申し訳ないのですが何が起こったのかを先に伺いたいのですが…」


 社会人として敬語を使うのは当たり前、しかしそれ以上に見た目が厳つく圧倒されてしまった。上半身裸で下は鈍色の袴姿、白髪の混じった短髪を掻き上げてサングラスをしている。そんなおっさんが胡坐をかいて後ろには6本ほど竹刀が立て掛けてあるのだ。ぱっと見だとそういう組の人だ。


「おっ、そうだな忘れていた。いわゆる異世界転移というやつだな君が友人たちと話しているのを担当が聞いて選ばせてもらった次第だ」


 マジか、勘弁してほしい。因みにラノベは好きだ、初めて読んだのは炎髪の少女が出てくる物語だ、それまではしょうもない読み物だと軽く見ていたが、いざ読んでみるとその非日常感に心を惹かれた。もちろん異世界系も読む。高校時代の友人と作品をおススメしあって「いつか行ってみたいな~」なんて特に本気にもしていないが話していた。まさか現実になるとは…。そういえば今仕事中だったのだが。


「あ、あのすみません。ここに来る前に仕事中だったんですがそこってどうなってます?」


 少々敬語が抜けたが見逃してほしい、それぐらいには焦っていたのだ。家族や友人ともう会えなくなる寂しさもあったがいずれ別れるだろうと思っていたのでそこまで取り乱したりはしなかった。だがしかし、責任をもってやっていた仕事は別だ。


「ん?仕事中だったのか、道理で来るのが早いと思った。確認するからしばし待て」


そう言うと目の前に黒電話が現れジーコロコロジーコロコロと音をたて


「おう少しいいか。今、件の少年がおるんだが仕事中だと言ってきた。現世はどうなっているか教えてくれ」


 いやいやそこ分業かい‼心の中でツッコんだ。ていうかこの人(?)説明係の割にはちょっと怖すぎないか?


「待たせたな少年。どうやらバック誘導中に後方確認を怠り敷鉄板につまずいて転倒、8tに轢かれて死亡扱いになったみたいだ。ただ現世の肉体はダミーにすり替え君自身に影響はないとの事だ」

「そう、ですか」


 淡々と状況を説明された。


「まぁそういうことだ。気にするなとは言えんが話を進めて良いか?」


 話を聞く限りどうやら神様…ではなく神様見習い、代理人とのことだ。上司が休暇を取っているため代わりに担当しているとのことだ。こういう場合女神様が対応してくれるものじゃないか?と言ってみたところ、上司も男神と言われた。『異世界=カワイイ女神様』がテンプレートだと思っていたのに…


 で、冒頭に戻る


「改めて聞こう。君のやりたいことは何だ?」

「そうですね。本物の銃を使ってみたいです」


 私は趣味でサバゲーをやっている、とはいっても月1回ないし2か月に1回くらいのライトなサバゲーマーだが。銃は撃ってみたいけど軍隊に入りたくはないし海外は物騒なイメージがあるし、何より血を見たくないという理由で猟銃の免許も取ってない。探せば日本にも銃を撃てるような場所があるだろうがそこまでして撃ちたいか、と言われればそうではないからな。


「銃か、ちょっと待てよ」


 なにやら分厚い資料をパラパラとめくりあるページで手を止めた


「一応転移先はすでに決まっている。技術力を考慮とこれか?」


 空中に一丁の銃が浮いている。木製のものは正直見てもいまいち違いが判らない


「M1ガーランドというものらしい。資料を見たらフルオート禁止、木製と書かれていたからその他のリストで一番上にあったものを選んだがこれでもいいか?」


 M1ガーランドか、どこかの会社がエアガンを出しているのを見かけたことがあるから見たことはあるけどマガジンがついていたような…まぁ見た目も嫌いじゃないしこれでいいかな。


「はい、それでいいです。ただ整備とかはできないんですけどどうにかなります?」

「ん?整備がいるのか、ちょっと待てよ……」


 また黒電話を出す


「おう待たせたな。とりあえずこいつには不壊を与えるそしたら整備の必要もなくなるらしい。でだ、転移先の世界について説明するが、まず魔法はあるがスキルはない。よくある異空間倉庫や剣技とかが使えるようにはならないから注意しろ。また体のつくりは同じだが身体能力や頑丈さは向こうが優れている。これについては君の体を強化するから心配ない、ただ転移後は慣らしておいたほうがいいぞ。最後に神様の加護で死んでも復活なんてことはない。十分に注意してくれ。何か質問は?」


 いきなり情報の濁流だ。とりあえず転移先についてはある程度良いとして、


「銃にいくつかアタッチメントをつけたいんですけど何か縛りはあるんですか」


 これでスコープとかサイレンサーがつけられなかったら痛いな、っていうかM1ガーランドにネジ切りってあったっけ?そこもどうにかしてくれるか。結果から言うとスコープ3倍から25倍とスリング、サイレンサーがついた。バレルの外側にネジ切りもついたので取り外しも可能だ。


「最後に転移先ってどこですか。あと、食べ物とか飲み物ってどうなってます?」

「転移先は教会になるな、飲食物に関しては心配するなほとんど変わらん。他は」

「とりあえずは大丈夫です」

「わかったこれで以上になる向こうには冒険者組合があるからそこで活躍するなり家を買って住むなり自由にするといいでは幸運を祈る」


 おっと、聞き忘れたことがあった。


「すみませんこれが最後ですが私を選んだ理由っていうのはあるんですか?」


いまの今まで忘れていたが結構重要なことだろう


「いや、特にない」


 その言葉を最後に、ここに来た時同様に浮遊感に包まれた。


 景色が移り変わるとそこには小さなベッドと木製の棚のある部屋の中だった。多分教会の一室なのだろう。ベットの上には先ほどもらった銃と革製のポーチがあった。この中にアタッチメントなどが入っているのだろう、そして部屋の中に大声が響いた。


「弾入ってねぇ‼」


しょっぱなから銃としての役割を果たさなくなった。




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