殺戮サクリファイス
白髪の青年——エル・シーズンもその一人だった。
その時だった。
———パシュン。
何かがエルの右腕を掠めた。
「え?」
コートが破れ、傷口からじんわりと血が滲みだす。
少し遅れて激しい痛みが脳内へと届く。
「まさか、まだ敵が…?」
辺りを見る。
誰もいない。巨大なビルが連なる中、彼一人のみ。
なら一体どこから……
———パシュン。
「…っぐ!?」
今度は右肩に激痛が走る。
肩口を射抜かれていた。
「まずい…」
感覚が消えていく右腕を押さえて、エルは逃げる。
「【贄よ這い出よ】」
エルの左手には一本のカナヅチが顕れる。
「【贄、
やや長めの詠唱だが、痛みを堪え詠唱し、カナヅチで地面を叩く。
すると、アスファルトの地面から大規模な砂埃が発生する。
濁った黄土色の砂塵が舞い散る中、エルは必死に足を動かす。だが腕の痛みのせいで足が震えている。
どうしてだ。
こんな感覚は初めてだ。
「【贄、
仕方なく2回目の詠唱をして目にも止まらない大ジャンプを行う。
(小回りが…利かない…!)
贄の魔法は対象から魔法そのものを奪うが故、極端なものばかりが多い。
「クソ…【贄、唸れよ大地】!!」
3回目の詠唱。
着地地点を見事に砂にして衝撃を吸収する算段である。
確かに砂は多少のクッションになった。
しかし、
ドォン!!
おかげで盛大に轟音が響いた。
「あぁ…砂なんて大嫌いだ」
そう思った時だった。
「うわっ!?人!?」
黒髪の少年が目を丸くしてこちらを見ていた。
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