隣の席の聖女様から何故か目が話せない

紅月 デュアル

プロローグ 『夏と教室と聖女様』

「あっつ…」


頭上から降り注ぐ太陽の光が人々からやる気を奪って行く7月の炎天下の中、俺…小鳥遊たかなし 優也ゆうやは歩いていた。


つい先程までエアコンのガンガンに効いた部屋にいたからか、外の気温がいつもより5割り増し位に暑く感じる。


(せめて帽子でも被ってくれば良かった…。)


帽子を被ってこなかったことを後悔するが、今から取りに戻ると家から出れなくなる気がするので諦めることにする。


大体、こんな暑いのに何故高校に行かねばならないのだろうか。

最近ではインターネットが普及しているんだからオンライン授業とかでいいじゃないか。

そうしたら俺はこんな暑さに苦しまずに済…いや、やっぱりいいわ。絶対に寝る気がするし。


「帰りて~…」


余りの暑さに家を出てからまだ数分しか経っていないと言うのにもう帰りたくなっている。

だが残酷なことに今日は自分が日直のため、帰ることは許されないのだ。クソがよ。


…まぁ良い。どうせ今日が終われば土日が待っているのだから、いつもよりモチベは上がるってもんだ。土日になったら思う存分一人でゆっくり出来るしな。


「はぁ…頑張るか~…」


重い足を少し上がったモチベをエネルギーに動かし、時折愚痴を溢しながら、俺は高校へと向かうのだった…



◇ ◇ ◇



「あ~…涼しいな~…」


エアコンの効いたの教室の中でそう呟く。ここは天国かな?

既に日直の仕事は終えており、後はHRが始まるのを待つだけである。


日直の仕事の関係で早めに来ているため、教室には俺以外誰もいない。

まぁ、まだHRまで30分はあるし、普通そんな早く高校に来ようとは思わないわな。

来るとしたらそれはよっぽどの馬鹿か優等生だ。


「あ、優也おはよう。もう来てたんだ」

「……えぇ」


タイミングが良いのか悪いのか…教室に入ってきたよっぽどの馬鹿の姿を見て、呆れたような声をもらす。

この馬鹿は園部そのべ 晴斗はると。いつも俺の一人の時間を邪魔してくる暇人だ。

俺は一人でいるのが好きなのだが、こいつは俺が一人でいるとき何故か話しかけてくる。…なんなの?暇なの?


「…何だろう。今、すっごく馬鹿にされたような気がする」

「気のせいだろ」


嘘偽りない澄んだ目で園部を見ると、園部は「まぁ良いや」と言って俺の席の前にある自分の席に座る。

危ない危ない…こいつ馬鹿の癖に察しだけ良いんだよな…。


それからしばらく、園部と会話(一方的)をしていると続々とクラスメイトたちが教室に入ってくる。

最初は静かだった教室が笑い声でだんだんと騒がしくなっていく。


…何でこんなに暑いのにあいつらは元気に友人と笑い会えるのだろうか。俺には絶対に無理だ。


まぁ、俺には笑い会える友達なんていないのだが(園部の馬鹿は勝手に一方的に話しかけてくるだけなので除外)。そもそも友達なんて作ろうと思わない。一人でゆっくり出来る時間が減るし、人間関係が面倒臭いしな。


「ねぇ、優也。聞いてる?」

「いや、聞いてない」

「えぇ…」


俺の嘘偽りない言葉に呆れたような声を出す馬鹿園部

正直どうでも良かったので聞き流していた。


「全く…そんなんじゃ、友達出来ないよ?」

「…別に、欲しいとか思わない」

「はぁ…何でそんなに頑なに友達を作ろうとしないのかな…友達の一人や二人いた方が楽しいよ?」

「…うるさい。こっちの勝手だろ」

「いや、友人として優也がボッチなのは見過ごせなくてね」

「俺はお前を友人だと思ったことはないがな」

「酷くない!?」


俺の中でこの馬鹿園部のことは俺の一人の時間を邪魔してくる暇人と言う認識なので断じて友人ではない。そこは何と言われようが譲る気はない。


と、俺たちが話していると。


「おはようございます」


不意に教室のドアが開かれ、そこから一人の少女が入ってきた。


「あ、檜山さんおはよう!」

「えぇ、おはようございます」


近くにいた女子が挨拶すると、少女は笑顔を浮かべながら挨拶を返し、俺の隣にある自分の席へと座った。

すると、クラスメイトたちが我先にと押し寄せ、人だかりが出来上がった。


俺は席を立ち、人だかりから遠ざかる。

隣であんなに騒がれたらたまったもんじゃない。


「はは、毎日大人気だね~聖女様」

「そのおかげで俺は、こうやって席から離れる必要があるんだがな」


遠巻きに人だかりを見るとその多さが分かる。

クラスメイトの殆どはあの人だかりにいるんだよなぁ…毎朝ご苦労なことで。


人だかりの中心にいる少女の名は檜山ひやま かえで

腰ぐらいまである金色の長髪にマリンブルーに輝く瞳、整った容姿を持ち、お淑やかで誰にでも優しいうえに成績優秀な優等生。

そんな彼女は学年問わず人気があり、『聖女様』と言うあだ名が付いている。

確か檜山に告白したってやつ、もう60人は越えるんじゃね?…男女問わずだけど。


「いや~いつ見ても綺麗だよね。優也もそう思うでしょ?」

「興味ない」

「つれないなぁ…聖女様を見て何も思わないのかい?」

「思わないな。関わろうと思わないし、関わりたくもない」

「何で?」


馬鹿園部の言葉に、俺は檜山を見ながら━


「あいつ、気にくわないんだよ。」


そう返した。


「気にくわない?どこが?」

「あぁそれは…って、わざわざお前に説明する必要とかないわ」

「え~教えてよ気になるじゃん」

「嫌だね。」


俺の言葉に「ケチー」と返す園部。

言っても良いんだが、多分こいつに言ったところで理解されないと思ったので言うのを止めた。

この違和感は多分、俺しか気付いてないだろう。


━━いや、多分このクラスだと分からないだろう。


「全く…聖女様の隣の席とか言うとてつもなく羨ましまれるポジションにいるくせにこれだもんな~」

「…好きでいる訳じゃない。むしろ、隣に人だかりができて迷惑だから早く席替えがしたい」

「うちの学校、席替え無いよ?」

「何…だと…」


え?じゃあなに?俺は一年間ずっとあの席なん??嘘だろ…


「最悪だ…」

「最初の頃に説明されてたよ?」


呆れたような表情でこちらを見る馬鹿園部

そんなん面倒臭かったから聞いてないんだよな~…

信じがたい絶望を目の当たりにしていると、チャイムと共に担任が教室に入ってきた。


「HR始めるぞ~。席につけ~」


担任がそう言うと、檜山の周りに集まっていた奴らがぞろぞろと自分の席へと戻っていく。


「じゃあ戻ろっか」

「…そうだな」


人だかりが無くなりようやく座れるようになった席に戻り、ふと隣に座る檜山の顔を見る。

そこにはいつも通り聖女の笑みを浮かべた檜山がいて━


「━━やっぱ、気にくわねぇわ」


と、俺はぼそりと呟くのだった…。




………後書き…………


最後まで見てくれてありがとうございます!作者です!

お待たせして、大変申し訳土座いません!!書き直し版ようやく完成しました!

いや、ようやく納得のいくストーリーがかけた…。(少し長くなったけど…)

所々変なところがある気がしますが取り敢えずよし!


コメントや良いね、フォローとかしてくれるとモチベが上がるのでよろしくお願いします!


それでは、次回をお楽しみに~



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