第8話

 黒いランドセルに黒い服装、横には亡霊のような白いワンピースを着て横に立つ細い女の姿が映し出されている。俺はジッと見つめていると画面右奥の方に、赤いランドセルを背負う最近どこかで見たような顔をしている男の子が居た。


 すると女は俺の顔に手を当てて言った。


「あら見つけた?」

「これは」

「えぇ、そーよ。この男の子の名前は【まさゆき】」

「まさゆき……」

「貴方が描いていた絵の中に居た汚い老人の中の一人よ」

「え?」


 ホームレスとなっていた少年に俺は驚きながらも、何故最近見たのかを覚えているのか訳分からずただボヤッとしていると、女は映像を止めて話し始めた。


「ここまで、とてもじゃないけれど信じられない光景が映し出されてきたわね」

「随分説明的じゃないか」

「えぇ、説明ですもの。これを見せたのは貴方にとって有害な毒であること、そう、これは貴方の記憶を蘇らせてしまう毒なの」

「なんでなんて言い回しをする?」

「それはこれからの映像を見て」


 バッと眩しく輝く映像、やけにリアルな太陽を見ているかのような輝きに俺は目を細めているとおかしな光景が目に映る。


「な、なんだよこれ」

「困惑するのも無理はないわね。だってこれは母親に覚せい剤を打たれている貴方の姿なんだから」

「ということはこの眩しさは」

「そう、貴方目線。ここはとある病院、といっても貴方の母親が医者として働いている病院」

「ということは既に?」

「えぇ、既に母親は医者を捨てて、病院を捨てて人生を捨てている」


 子どもに覚せい剤を打つ母親なんてろくなもんじゃねえと思ったが、そもそも当人である母親も打っているということで、精神崩壊を起こしちゃんとした判断が下せなかったのだろうと、何故か母親を許容していた。


「ねぇ、これから見せる映像本当にみたい?」

「このまま忘れて生きるのは嫌だと言ったはずだ」

「そう……」


 バッと映し出された映像。

 そこには見るに堪えない、そして無惨なほどの俺視点での地獄が。

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