第6話

 スクリーンの映像には、どこの誰か分からない赤ん坊の生まれたての姿、そしてその赤ん坊を拭き母親に抱かせる助産婦さんたちの姿が映し出されていた。


 いきなり始まった出産後の映像にただ俺はボケッと見ていると、音声が聞こえ来る。


 私の赤ん坊……!


 母親の啜り泣く音、赤ん坊の泣き声、産まれた感動に包まれる室内の映像。


 一瞬瞬きをし、目を離した隙に映像が暗転する。

 すると、女はスクリーンの前に立って話し始めた。


「ここの映像に映っていた赤ん坊は、貴方自身よ」

「なんでこんな映像を見せた」

「それはここから続きを見ればわかる」


 女は続きの映像を映し出した。


 何歳か分からないがクレヨンを片手に握ってぐじゃぐじゃと動かして絵とも呼べない物を描く小さい子どもの姿が映し出される。ジッと見ていると次の瞬間、やせ細った姿の女性が映る。


 ホラー映像にも思える現れ方にビクッと身体を動かしてしまった時だった。女は再び映像を止めて言い始めた。


「今痩せ細った姿の人間は、貴方を産んだ母親の姿」

「な、なんだあれは!」

「そうなるのも無理はない。彼女はヤクに浸った生活をしていたのだから。これ以上の話を聞きたくなければ辞めることも出来るけれどどうする?」

「……見せろ」

「分かったわ」


 女はニコッと俺に微笑みを見せて、再スタートさせた。痩せ細った女の近くには注射器が何本も転がっているだけでなく、タバコの空き箱が何箱も落ちていた。


 そんな汚い部屋でも子どもは気にする様子もなく、ただジッと絵を描くだけだった。ぐじゃぐじゃと動かしているだけかと思いきや、次の瞬間子どもが描いていた絵が映し出される。


「な、なんだよこれ!」

「貴方が無意識に描いた貴方の未来よ」


 絵に映し出されているのは、おじさんに抱かれる1人の女性の姿、複数人の汚い老人たちに囲まれトイレで襲われている女性の姿が鮮明に描き出されていた。


「無意識でこんな絵を描けるかよ……!」

「無意識だからこそ、いや、あなたには特別な力があったのでしょう」

「あ、有り得ない」

「えぇ、私もこの映像を見た瞬間は理解出来なかったわ」


 俺はただ目の前に映る映像、絵の正体が嘘なのではないか、作られた物なんじゃないか自分を疑った。


 だが、そんな淡い気持ちも吹き飛ばされる事実が襲う。

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