第20話
閉じ込められて何時間経ったのか、何日経ったのかわからずじまいで、水を飲んでいないせいか考える能力も低下し、このまま逝ってしまうんじゃないかと言う恐怖が襲う。
さらに追い討ちをかけるようにこの部屋は異常な程に防音性が高く、自分が発する言葉や動く音以外何も聞こえない。誰かがこの部屋の近くにいるのかということさえ分からない。
俺はただ泣きながら、その涙を口に含み何とか水代わりに飲んでいた時だった。扉がガチャッと開く。久しぶりに開いた扉。俺は嬉しくて、ただ嬉しくて叫んだ。
「お前やっとか!!!」
「……」
すると現れたのは血だらけになった元カノの顔。そしてその身体を頭を髪の毛を引っ張りながら俺の元までやってくる返り血を浴びた雨合羽を付ける妹の姿。
「……お兄ちゃん。水のみな」
元カノの遺体らしき身体を置き去りに手錠を外して妹は俺に水を飲むよう急かした。俺は久々に飲める水に感動しつつも、妹が人を殺したんじゃないかと不安になっていると、妹は言った。
「ごめんね。私が油断した」
「……油断したのは俺だ」
「……ごめんね。私はお兄ちゃんの事愛してるつもりだったけど、お兄ちゃんを守れない私は生きている価値がない。ごめんね」
「何を言っているんだよ。お前がいなけりゃ俺は死んでた」
「ごめんね。お兄ちゃん。だから今度は絶対私の傍から離れさせないから。私が面倒見るから。私が……」
妹はこの一件でさらに重くなったように感じた。
いや感じただけじゃなく実際にそうなのだろう。だが俺はそれを許容するだけじゃなく、妹に対し保護意欲が湧いた。
「お、お前は俺と一緒に居ればいいからな?!」
「うん……」
「お、俺は大丈夫だから心配するなよ!」
「うん」
「俺はお前がす……」
俺はここで気づいた。
このセリフを言わされているのでは無いかと。
言わせるように誘導してきているのではないかと。
すると妹はニヤッと不快な笑みを浮かべながら言った。
「なーんだ。後ちょっとだったのに」
「……油断ならねぇな」
「ふふっ。ちなみにあの女は死んでるよ。私が殺した」
「お前……」
「大丈夫。私は捕まらないし、そもそも警察は分からないよ」
「……?」
「お兄ちゃん。今度からは私の秘密を探ってみて。全部がわかって私を許せたら私と結婚して。許せなかったら殺して?」
妹の秘密とはなんなのか。
そして、妹の秘密がわかった時、俺は妹を殺さなければいけないのかと思っていた。実の妹、いや実の妹ではなくとも数年間過ごして居た妹を。
俺は水を飲んだが、未だに思考能力は戻ってこず判断能力が低下していた。だから妹に対して言った。
「……俺はまだ分からない。だから待ってくれ」
「分かったよ。明日まで待つね。帰ろお兄ちゃん」
今はただ家に帰りたい。その一心だった。
だからこの家から逃げ、俺と妹は自宅へと帰還した。
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