第15話
俺はスーパーで買い物を終えた頃には既に日は落ち午後18時をまわっていた。酒も買い、久しぶりに晩酌もしようと、ゆっくり家に帰ろうとしていると後ろから誰かに激突され前に倒れてしまった。
歩道にちらばった商品を俺はかきあつめて袋に入れていると、ぶつかってきたと思われる人も手伝ってくれた。全てをしまい終えると俺はその人に向かって礼をしようと思った時だった。
「あ、俺くん?!」
「……」
俺にぶつかってきたのは元カノだった。
礼を言わないのは失礼で有り得ないが、ぶつかってきたのは元カノ自身だということもあり、俺は無言でその場から立ち去ろうとした時だった。元カノは俺の服の袖を掴みながら言った。
「お願い。話させて」
うるうるとした目つきで見つめる彼女に、俺はただ困惑したまま立ち尽くしてしまった。
数分後ハッと我に返り、俺はスーパーの袋を持ち上げ彼女から逃げるようにその場から走り去った。
二度とあの女とは関わらない。そう決心した心が揺さぶられたことに、そして自分の覚悟の弱さが露呈したことに恥ずかしさでいっぱいだった。
数十分間ほど走った後に家に着く。俺は静かに玄関を開けて、居間に行くと鍵を閉めていたはずなのにも関わらずテーブルの上に手紙が僕を見なよと言わんばかりにドンッと置いてあった。
俺は恐る恐るその手紙に触れると、何かがパリパリッと乾いた音を立てながら床に落ちる。内容を読もうとすると、手紙に書かれていた文字がバラバラと崩れながら床に落ちる。
何が何だかわからず床に落ちた物体に触れた瞬間理解した。
【血】が固まったものなんだと。
俺は恐怖からその紙をゴミ箱にビリビリに破いて捨てバラバラと崩れ落ちた血の文字を掃除機で吸い取り、存在しなかったことにした。
一気にドバっと疲れが現れて俺はそのまま着替えをすることも出来ずソファに寝転がり目を瞑った。
☆☆☆
数時間ほどが経った頃だろうか。俺は暗い部屋の中目を覚まし、ソファから身体を起こし、床に足をつけた瞬間だった。
パキパキッッと不快な音が鳴り響く。恐る恐る足元を見ると先程捨てたはずの血の塊が、いや先程よりもはるかに多い量が床にばらまかれていた。なんの嫌がらせなのかわけも分からなかったが、俺の脳は、身体はたった一つの答えを思い浮かべていた。
【妹の仕業だと】
俺は家のどこかに妹がやったという証拠がないかを探し回った。
数時間探し回った挙句、結局見つかったのは自分の抜けた毛髪や何年も触れていなかった漫画の山、そして久しぶりに見つけた過去に書いた日記だけだった。
妹ならなにか証拠を残していくのではないかと思っていたぶん、何も見つからなかったことに不安が走った。
【妹の仕業じゃないのかもしれない】と。
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