第3話
「お願いします、ウィリアム王子に会わせてください! 私が、エマなんです! 今、王子と婚約しているのは、私に成りすました双子の妹であるヘレンなんです!」
私は殿下に会うために王宮を訪れた。
しかし、殿下に会うことはできず、兵たちに邪魔をされていた。
いくら説明しても、兵たちは私の言うことを信じてくれない。
「お願いですから、ウィリアム王子に会わせてください。殿下は、ヘレンや両親に騙されているんです!」
私は必死に訴えた。
しかし、兵たちは私の言葉を信じてくれず、殿下に会うことは許可されなかった。
そして、どうして私のことを信じてもらえないのか、その理由もすぐにわかった。
一人の兵が、私に説明してくれた。
「ヘレン様、いい加減にしてください。それ以上嘘を続けても、あなたの立場を悪くするだけですよ」
何を言っているの?
私はヘレンじゃなくて、エマよ。
殿下と一緒にいるのがエマだと思っているから、私のことをヘレンだと思ってしまうのはわかるけれど、少しは私の言葉を信じてくれたっていいでしょう?
「ですから、私がエマなんです。殿下と一緒にいるのがヘレンで、彼女は私に成りすましているんですよ。私はそのことを、殿下に説明しに来たのです。だから、お願いですから殿下に会わせてください」
「やれやれ……、困りましたね。何もかも、あなたのご両親の言った通りになりました」
兵の一人が、困った表情で私に言った。
私の両親が言った通りになった?
いったい、どういうことなの!?
私はその疑問を、兵にぶつけた。
すると、信じられない答えが返ってきた。
「ですから、あなたのご両親から、あらかじめ伺っていたのです。ヘレン様が王宮にやってきて、駄々を捏ねると思うので、どう扱っても構わないと、ご両親から言われました。殿下と婚約したエマ様のことを羨ましく思っているから、めちゃくちゃなことを言って殿下に会おうとすると思うから、その際はどんな処罰を課しても構わないと言われています」
「そんな……」
私はそれ以上、言葉が出てこなかった。
両親は、私が殿下に真実を伝えに行くことを予測していた。
だから、あらかじめ手を打っていた。
まさか、こんなことになるなんて……。
「どうか、お引き取りください」
私は家に帰るように、兵に促された。
しかし、そんなつもりは私にはなかった。
こんなこと、納得できるはずがないわ。
なんとしてでも、殿下に真実を伝えなくてはならない。
「私は殿下に会わなければならないのです。邪魔をしないでください」
私は無理やり王宮に入ろうとした。
しかし、兵たちによって取り押さえられてしまった。
どうして私がこんな仕打ちを受けないといけないの?
悪いのは全部、殿下を騙しているヘレンと両親なのに……。
私は絶望していた。
しかし、今のこの最悪の状況は長く続かないことに、このあと気付くのだった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます