第12話事件解決
「安藤さんですよね」
男はびくりとこちらを振り向いた。
「実はこのビラを見てお話をさせていただきたくて」
刑事は打ち合わせ通りに話始めた。
孝雄はゴクリとのどを鳴らして明らかに警戒をしていた。
「あ、もしかして雄太の手がかりでも見つかったんですかね」
孝雄はとぼけてみせた。
俺は思わずムカッとなり孝雄に詰め寄ろうとした。
それを刑事が静止し
「実は私こういうもので、駅前で奥様がビラを配っている件で事情をお聞きしたく」
警察手帳を見るなり孝雄は明らかに動揺した。
「なんですか、そう、そういえばまずは自分たちで探そうと、あまり騒ぎになっては申し訳なくて。明日にでも捜索願いは出そうとおもっていたんですよ」
まだ言い逃れをしようとしていやがる。
「なので、今日のところはお帰りください」
そのまま孝雄は家の中にはいろうとした。
痺れを切らした孝雄の肩を引っ張りむりやり家の中に入った。
「おい、あんたなにすんだ、不法侵入だぞ」
「うるせえ、よくもそんなことがいえるな」
俺は孝雄を怒鳴り付ける。
私は伯父が無理やり部屋に入るのを確認して呼びかけた
「伯父さん、ベランダ。ベランダに行って」
伯父は迷うことなくベランダに向かう。
孝雄と刑事が後を追う。
孝雄は必死に伯父に掴みかかっていたがそれを振り切って伯父はベランダのドアを開けた。
「おい、これはどういうことだ」
叔父が孝雄に言う。
刑事も遺体をみてぎょっとする。
「安藤さん、これはいったいどういうことですか、署で事情を聞かせて下さい」
孝雄はあわてて玄関に走っていく。逃げる気だ。
だが扉がうまくあかない。
私が外で必死に抑えているからだ。しかしこのままではすぐに開いてしまう。
「く。絶対開けるもんか」
刑事が孝雄の肩に手を触れる。
孝雄は思い切りそれを振り切った。すると刑事はわざどらしく転んで見せた。
そして起き上がり
「安藤さん、公務執行妨害であなたを緊急逮捕します」
強引な気はしたがやはりこの刑事頭が切れるな。
後ろから慌てたような足音が聞こえた。
「あなた、どうしたの」
必死な形相で小百合が駆け寄ってきた。
「奥さん、ベランダに雄太君が遺棄されいるのは知っていましたか」
小百合の顔面が蒼白するのがわかった。
「え、雄太?ベランダ?遺棄?」
もはや言葉になっていない状態であった。
小百合はなりふり構わずベランダにむかい絶叫した。
予想外だった。小百合が帰ってくるとは
雄太君に母親のこんな姿を見せるべきではなかった。私は後悔した。
すると雄太君の声が聞こえた。
「やっと、見つけてくれた、お姉ちゃんありがとう」
「え?雄太君」
雄太君のほうを振り向くと、そこに雄太君の姿はなかった。
え?消えた?そうか母親が見つけたから・・・逝ったのか
孝は後から応援に来た(近くに待機していた)刑事たちに連行されていった、小百合は雄太君の亡きがらに抱きつきながら人目もはばからず泣いていた。
「小林さん、協力ありがとうございました、けどちょっと無茶しすぎですね。次はこうはいきませんよ」
斎藤刑事は伯父に釘を刺して署へ帰っていった。
伯父は黙ってたばこに火をつけた、一息ついて
「雄太君は逝ったのか」
「うん。そうみたい。お母さんが雄太君のことを見つけたら私にお礼を言って消えちゃったよ」
そうか、と伯父の声が聞こえた。
「帰るか」
「そうだね」
そして私は何の気なしに聞いた
「そういえば、小百合さんから依頼を受けったってことは報酬みたいなのもあるんでしょ?ぼったくっちゃだめだよ。」
伯父は少し考えながら言った。
「ああ。まあ金をもらうのは無理だろうなあ」
私は伯父の顔を思わずみた。こんないいかげんな伯父にも良心がちゃんとあるんだな。
まあ、たしかに子供が死に夫が犯人。そんな状況でお金なんてとれないか。
私はそのときの伯父の言葉の本当の意味に気づいていなかった。
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