魔王にされた異世界召喚

大艦巨砲主義!

第1章 魔王にされた異世界召喚

プロローグ 召喚された者たち


「勇者様方、よくぞおいでくださいました!」


 突如として教室の床が光り、真っ白になった視界の中で体が浮くような感覚に見舞われた後––––

 光が収まり視界を取り戻した時、私立桜峰学園3年2組の面々の耳に最初に聞こえてきたのは、聞きなれない女性の高い声だった。


「はぁ……?」


 勇者?

 聞き覚えのない声に、聞きなれないワード。

 先ほど遭遇した摩訶不思議な現象による混乱も治らない中で、3年2組の一員である駒塚こまづか ひじりはひとまず現状を把握するために目を開けた。


「なっ……!?」


 そして、直後に絶句する。


 彼女の目の前に広がっていた光景は、担任の教師が連絡事項を申し付けて後は解散するだけとなっていた、いつもの夕暮れ時の教室ではなく。


 石造りの壁に囲まれ、大きく色彩豊かで絢爛なステンドグラスの窓が目を引く、教会のような見知らぬ場所だったからだ。


「どこだよここ!?」

「もし、なんかの撮影でござるか?」

「これって噂の異世界召喚というやつでは!」

「ヘイジョージ!ここは何処?」

「誰がジョージだ誰が」


 そして、周辺から続々と聞こえてくるのは、一部おかしなものもあるが聞きなれたクラスメイトたちの声。

 辺りを見渡すと、聖と同じようにこの大きな部屋の中心部に3年2組のクラスメイトたちが座り込んでいた。

 彼らも一様に教室からいきなり見知らぬ教会らしき部屋に移動していたことに混乱している様子である。

 ……まあ、一部変な輩もいるが。


「君がジョージかね、ミスター駒塚?」

「…………」

「返事をしたまえジョージ」


 ……誰がジョージだ誰が。

 それからミスターって男に向けての敬称だろうが。

 隣にやってきていきなり無礼な発言を飛ばしまくる意味不明なアホのクラスメイトに心の中で罵声をぶつけ、表面上は関わりたくないので礼儀よく無視の対応を取る。


「へいほいジョージ、君の名は?」


 聖に無視されたアホなクラスメイトは、また別の混乱しているクラスメイトに向かってジョージ呼ばわりをしに行った。

 ……本当にあいつはなんなんだよ。


「うるせえな、今混乱してんだよ!」

「怒りを鎮めたまえジョージ」

「誰がジョージだ誰が!」


 ジョージを量産するアホは放っておき。

 聖は先ほどの声がした方向に目を向ける。


 本物の教会ならば、聖書を携えたかっぱ頭の神父がありがたい説法を信者に唱えているだろう祭壇らしき場所。

 そこにはいかにもこの状況を聞くべきだろう相手である、中世ヨーロッパの王侯貴族みたいな裾が傘のように広くてウエストを無理やりひきしぼっているだろうドレスに身を包む、金髪碧眼の絵画から出てきたかのような絶世の美女が立っていた。


「歓迎いたします、勇者様。私はオリスデンの女王、セレスティアと申します」


 絶世の美女は、まだ半分が混乱しており、そして残り半分が現実を忘れその美貌に見惚れている3年2組の面々に向かって、自らの名前を告げた。




 ……この日、私たち桜峰学園3年2組の面々は、異世界に召喚されたのである。

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