白金の王、豪脚を轟かす。
くうき
モノローグ 日本ダービー
『さぁ!第四コーナーを回り最後の直線へ各馬が一斉にスパートをかける!!』
芝を駆ける重低音と観客の声援が心音を置き去りにする。
『最後の直線だっ!先頭はゲットウイング!おぉっと!!大外から一気に駆け上がるはゴールドバスター!さぁ、分からなくなってきたぞっ!第86回のダービーの栄冠をつかむのはどの馬だっ!!』
実況の声も熱を強めていく。
『さぁ、残り200を切った!お~っと!!そのさらに大外から一気にプラチナヴェッセルが翼を広げたっ!!二冠へ向けて一気に前を捉えていくっ!!』
前を見る。目の前は誰もいない。この景色は格別に近い。
いや、格別なんだ。クラシック路線の頂点と言っても過言ではない。行くんだ。鞭を叩くと同時に豪脚を持つ足が加速していくことが分かる。
『100を切った!!プラチナヴェッセル一気にその差を二馬身、三馬身のリードをつくる!!これはもうあり得ない!!父の黄金の血を色濃く継いで前年見た兄の三冠の姿、それを照らし合わせることを許さない!!
後続も脚を使うがこれは間に合うことはないっ!!
三冠への道を繋いだっ!!プラチナヴェッセル、二冠達成!!後続を豪脚でねじ伏せました!!
若武者、
競馬場に歓声が震えあがった。馬券が飛び舞う観客席は一気にボルテージは最高潮に熱を持っていた。
「よしっ!!・・・」
鞍上で俺は、静かにガッツポーズをとった。無敗だ。あの、チビで弱々しかったヴェッセルがやってくれた。
小さくてもこの一歩はとっても大きかった。誰にも期待なんかされず牧場でただ一頭ぽつんといたこいつが・・・今は世代の主役になれたんだ。
「・・・あれ?・・・な、何で・・・。」
一筋の雨が頬を伝っていく。無意識のうちに静かに伝う。過去を知ってるからなのかな?新馬戦から今のダービーまで・・・こいつは・・・
この時だけは心地よかった。敗北を知らないって勝手に思っていた。しかし違う。それを想ったことで俺はある意味敗北を知ってしまった。
「違う・・・この涙は、俺が不甲斐ないからだ。」
空は憎いほど青かった。嬉しさなんてない。そこにあるのは自分がどれだけ驕っていたか。
これは俺の力で勝っているんじゃない。
こいつ自身が引っ張ってくれたから勝てたんだ。
「まだだ。菊の花は・・・空白だ。」
二つの王座は今手に入れた。しかし、まだ衝撃に終わりは迎えてなんていない。三冠馬は皆それぞれ相応しい二つ名を貰う。
『英雄』と呼ばれたり、三冠だけでなく旧八大競争のうちの五冠を有し『鉈の切れ味をもった五冠馬』、鬼のような追い込みでつかみ取った『奇跡の豪脚』、はたまた絶対が許された『皇帝』、他の追随を許すことの無かった『シャドーロールの怪物』・・・そして、こいつの兄貴がもらった二つ名『金色の暴君』。
三冠を語るには早すぎるとは思う・・・でも、ヴェッセルはできると思う。
『三冠は果て無き夢への滑走路。』
昨年、ヴェッセルの兄貴アンオーリヴが菊花賞最後の直線に入るときの実況。その声にその言葉に俺は震えあがっていた。
結果は、完封。気性面の粗さも加え、彼は暴君や激情の三冠馬とか呼ばれ始めた。多分、こいつは・・・兄貴と比較される。どちらも不完全、しかし、両者には強さに対する気持ちが違う・・・先輩だって・・・そうは思っている、はずだ。
「・・・ふぅ、まだ、止まれないな。ヴェッセル。」
一先ず、勝利の余韻に浸っておくか。そう、心の中で割り切り俺はヴェッセルの頭をわしゃわしゃと撫で繰り回した。
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ちなみに、この作品で書いてあるプラチナヴェッセルのモデル馬は一応ゴールドシップ(父ステイゴールド・母ポイントフラッグ・母父メジロマックイーン)です。ただ成績に関して言うとまだ決めてないですが、まぁ割と強めに設定すると思います。
そして、鏑矢くんのモデルは和田竜二騎手(若いころの)です。
まぁ、おまけ。
ゴルシの勝鞍(主なやーつ)
皐月賞(2012)
菊花賞(2012)
有馬記念(2012)(ちなみに後3回出るが順位は3着、3着、8着となっている)
宝塚記念(2013、2014)『2015年・・・120億事件』
天皇賞・春(2015)(ちなみに、2013は5着、2014は7着となっている)
阪神大賞典(2013、2014、2015)
戦績28戦13勝(13ー3ー2ー10)
それと、阪神競馬場でのレースに対してめっぽう強い。
まぁ、これくらいで終わりますかね。次回からもちょこっとあとがきに書いていきます。
次回は明日。・・・だと思う。
また、感想でモデルにして欲しい馬がいたら感想で書いてくださると嬉しいです。
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