第3話 幸せの言葉
その日の晩。
赤ちゃんだった時とは違い……親子とも言い難いので、大家さんの記憶と書類には『同棲者』と書いてあります。書き換えをしてくださったのは、もちろん
感謝しても仕切れないですが……序盤は色々大変でした。
食事の仕方もですが……お風呂事情です。
僕は、経験がなかったわけではありませんが……女性の身体を見るのは久しぶり過ぎて、ドキドキしました。
姉の体など、せいぜい向こうが小学生の時に見た程度ですし……大人となり、女性とお風呂に入るなど片手で数えられる程度。
なので、大きくなった沙羅ちゃんを……赤ちゃんの時とは違ってお風呂レクチャーをするのは大変でした。
そして、沙羅ちゃんはそれが気に入ったのか。
「
と、ほぼ毎回……こう言うのです。
まだ家族愛程度しか意識してなかった頃とは違い、今日からは違うんですよ!?
貴女を女性として意識しているのに……沙羅ちゃんは気づいているのでしょうか?
どちらかわかりませんが、意気揚々とお風呂の準備をしていますし。
「……わかりました」
しかし……キラキラ笑顔で提案する沙羅ちゃんの気持ちを無碍にするわけにはいきません。
なので、僕から折れるしありませんが……お風呂掃除を終え、そのまま電源を入れてきた沙羅ちゃんに……僕は言うことを決めました。
僕はコーヒーを淹れていたので、カップと沙羅ちゃっんへの豆カスのお皿をテーブルに置きました。
その用意を見て、沙羅ちゃんはほっぺをピンクに染めて嬉しそうにしてくれます。
「まだ寒いから、あったかいの嬉しい!」
赤ちゃんの時とは違い、通常のブラックコーヒーを飲むのにも慣れたようで……カップを手に取り、すぐに口をつけてくださいました。
「……沙羅ちゃん。少しお話を聞いてくださいますか?」
「? お話?」
この様子だと、僕が次に言う言葉がわからないでしょう。
しかし……僕は心に決めていたので、彼女の前に移動して膝をつき……目線を合わせました。
「僕と沙羅ちゃんの過ごし方が、随分変わりました」
「? うん?」
「……貴女の気持ちを無視しても、前に伝えた言葉も間違えてはいないと思います」
「……柊司さんの、が変わったの?」
「ええ。ですが……いい方向にです」
沙羅ちゃんがカップを置いて僕に向き合ってくださったので……僕はその手を包み込むように触れました。
「?」
「沙羅ちゃん……僕は貴女の気持ちに、きちんと応えたいと決心出来ました」
「! それって……」
「家族だと言う気持ちも変わりありませんが……関係を変化させましょう。僕の……恋人として。将来のお嫁さんになっても欲しいんです」
きちんと言葉を紡ぎますと……沙羅ちゃんは驚いた顔をしました。
すぐに涙も流し……それが、なぜか『心の欠片』のシャボン玉になってしまいましたが。
僕は、それは後にしようと……立ち上がって、沙羅ちゃんを抱きしめました。
「……う、れしい!」
沙羅ちゃんが僕にも腕を回してくださいました。
涙声でも、嘘偽りのない素直な言葉です。
僕も、力を少し込めて抱きしめて……。
「愛しています」
その言葉を贈りました。
その後、お風呂には一緒に入りましたが……成り行きでそれ以上の関係になるのは無理なので、キスだけに終わりましたが。
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