第十章 綿ぼこり食生活改善④

第1話『餡菓子にコーヒー』①

 きな粉や青のりは、颯太ふうた君の魔法ではご用意されていませんでしたので。


 シンプルに、小豆餡のみのおはぎです。もち米の粒感は火坑かきょうさんに教えていただき……お餅よりは、半殺しとも呼ばれているお米の粒感を残したものに。


 あんこは粒あんとこしあん。


 沙羅さらちゃんには、小さく作ったおはぎをベビーチェアのテーブルの上に置きますと……あの夏祭りでも口にした、『あんこ玉』のように見えたのかすぐにでも食べたいと小さな手を伸ばしてくださいました。



「ふふ。お待ちください、沙羅ちゃん。皆さんとご一緒に食べましょう」


「う?」


「皆さんと食べるとより一層美味しいんですよ?」


「あー!」



 亡くなった姉も……よく言っていました。


 ご飯はひとりより、ふたり三人……もっと大勢で一緒に食べるとより一層美味しく感じられる。


 僕も、両親や姉が生きていた頃は……それが普通だと思い込んでいました。


 彼らが先に逝き、ひとりとなって病気にもなってしまったことで……実感出来ましたが。



柊司しゅうじさん、こちらの小豆にはコーヒーも合うと思うんです」



 お茶はまかない用にとっておいたものを準備しようとしましたが、火坑さんがそう提案してくださったんです。



「そうですね……。先ほど飲んでいただいたものより、あんこに合うのは……」



 せっかくの機会ですし、苦味が少し多めのコーヒー……マンデリンといきましょう。


 ミルク系がないので、エスプレッソは颯太君には厳しいですから。沙羅ちゃんはまだエスプレッソやその豆は食べさせたことがありません。


 豆はきちんと保管してありますので、コーヒーマシンで人数分ささっと淹れてから……大量の豆カスは、沙羅ちゃんのご飯用に保存容器へと移しましたとも。



「「いい香り〜〜」」



 颯太君と美兎みうさんもですが、火坑さんもうっとりと言う表情になってくださいました。コーヒーショップの店長としては、嬉しいことです!


 沙羅ちゃんには、少しミネラルウォーターで薄めたものにさせていただきました。



「お待たせ致しました。マンデリンコーヒーになります」


「わぁ!」


「色は普通のコーヒーだけど?」


「一般的に、カフェなどで出されるコーヒーとしても有名ですが。苦味と酸味が少し特徴的なコーヒーなんですよ」



 某コンビニ店に行くと、季節限定のドリップコーヒーとかで販売していますからね?


 僕もあれは味は劣るものの、寒い時のお供によく飲んでいたものです。コーヒーショップを営んでいても、他を軽視しませんよ?



「いい選択ですね? 先ほどいただいたのでも、もちろん合うとは思いますが。適度な酸味と苦味があるとより一層あんこの味わいを引き立ててくれるはずです」



 火坑さんは、とても綺麗に微笑んでくださったので……猫のお顔なため、動物も大好きな僕の心臓を鷲掴みされた感じになりました!?


 いけません!!

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