第3話『とろとろオムハヤシ』

 とろとろやけど、ふんわり仕上がっとるオムレツ。


 完全に自家製ではないけど、美味そうなハヤシのルゥ。


 ちょっと覗いてるチキンライスも艶々しとるように見える……!!


 絶対美味いやろ!? と俺は沙羅さらをベビーベッドに下ろしてカウンターに座れば……熱々美味そうなオムハヤシちゃんが俺を出迎えてくれた!!


 柊司しゅうじが他にもと、簡単なサラダとコンソメスープを置いてくれてから、俺は手を合わせた。


 かっ込むのはもったいないと思い、ゆっくりと口に入れていく。



「〜〜〜〜!!」



 卵はとろっとしとるのに、ちゃんと焼かれていて食感はふわふわ。


 その下のチキンライスは肉が大きめやけど、柔らかくて歯で簡単に噛める。噛めば噛むほど、旨みが出てくるんや。焼肉とかみたいに肉汁あふれるとかはないけど、めっちゃケチャップライスに合うねん!!


 ガキん頃は苦手にしとった……ピーマンのみじん切りも舌休めな感じで、ええほろ苦さ。玉ねぎも甘い。ちょっとトロッとしとんのが柊司流や。


 そこに、濃いめのハヤシルゥ。


 他の茶店とかやと、こう言うのには白飯かピラフが多いらしいが……俺は昔から柊司のこのオムハヤシが好きなんやよな??



「美味しいですか?」


「文句なしにうまいわ!!」



 柊司が調理師免許取ったら、確実に客へのアピールが出来る。


 俺もコーヒーは淹れれるから、柊司がフードで俺がバリスタぽく営業するのも悪くない。


 そこに、看板娘になった沙羅も加われば、さらに文句なしにええ店になる!!



「あーう! あうー!!」



 俺がオムハヤシを半分以上食べた頃に、沙羅がこっちに手を伸ばしてきた。


 柊司に抱っこか? と柊司はすぐに抱っこしてあげたんやけど……沙羅は俺の方に向けて、腕を伸ばした。俺……と言うか、食べかけのオムハヤシぽい。



「うーん。沙羅ちゃんも、賢也けんや君の食べてるご飯が食べてみたいんですか?」


「う!」


「ほー?」



 ちょっとずつやけど、普通の食事にも興味を持つようになったと柊司が言ってたが……ほんまやったんな??


 ただ、口に入れてもまだ豆カスやコーヒーとは違って吐き出してしまうらしいが。


 けど、経験第一や……と、ベビーチェアに座らせてから受け皿などを準備して、俺の食べかけのオムハヤシをスプーンですくって口に入れさせてみた。



「……あー……」



 離乳食以来やけど、見事に吐き出したわ……。飯で遊んでいるわけやないが、まだまだこの妖怪は食うもんが限られているらしい。


 なので、柊司がすぐに俺の食後にと淹れたカフェラテで出た豆カスをたっぷり上げてやった。



「あう!! あうう!!」



 沙羅は、それはそれは美味そうに口にしていく。普通あんなのめっちゃ苦い上に食えたもんじゃないが……人間やないし、食費あんまかからんからええかと思っておくことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る