第2話『濃厚アフォガート』①

 準備は昨日のうちにあらかた仕込んでおきました。


 今日用意しますは、濃いめでもかなり……濃いエスプレッソですね??


 それともうひとつ。



「ジャジャーン!!」


「うー?」



 沙羅さらちゃんの前に見せたのは、白くて平たく見える何か。


 僕はその正体を知っていますが、沙羅ちゃんは当然何を意味しているのかわからないため、可愛いらしくベビーベッドの上でくるりんと首を傾げています。



「ふっふっふ。沙羅ちゃん、これはアイスクリームです!!」


「あー?」


「そうです!! ちょびっとだけ、食べてみてくれませんか??」


「う!」



 今朝からですが、沙羅ちゃんが僕の食べていたのものに興味を持ってくださいましたし。


 カプチーノとかも苦手でいるようですが……アイスは、また違うかもしれないと僕の勝手な想像ですが。ただ、単純にアイスクリームだけを食べさせるわけではありません!!


 これに、抽出しておいたエスプレッソを使います!!



「こんにちは〜」


「店長さん!! 外暑いよ!! アイスのアメリカーノお願い!!」



 沙羅ちゃんにさあ用意しましょうと言うところで、お客様がご来店です。僕と沙羅ちゃんは室内なので冷房にあたって涼しいですが、外はどうやら真夏らしく暑いみたいです。



「いらっしゃいませ。サイズはロングでいいでしょうか??」


「うん、お願い!」


「私はブレンドのアイスで!!」



 お客様は、同じ駅近くにあるビル内のインフォメーション担当さん達です。ビル内で移動出来れば良いのですが、双樹そうじゅの入り口は外側なんですよね……。遠回りでも、来ていただき感謝感謝ですとも。気合いを入れてアイスコーヒーをお出しします!!


 水出しではなく、マシンからの抽出なので室内に湯気が立ちます。



「あ、沙羅ちゃーん!!」


「今日も可愛いね〜?」



 待ち時間に、沙羅ちゃんのお相手をしてくださったりするお客様も多いので……遊んでいるうちに出来てしまうからと大変好評です。


 ただ、今日はせっかくなので……先程沙羅ちゃんの前に用意したアイスも使いましょう。



「お客様、少し試食をお願い出来ますか??」


「試食??」


「え、店長さんの?? なになに??」


「アフォガートと言うのは、ご存知でしょうか??」


「……知らなーい」


「おしゃれな名前ですね??」



 作り方はすごく簡単です。


 まず、注文していただいたアイスコーヒーをそれぞれお出しした後に。


 器に適量盛り付けた手作りアイスクリームの上に……熱いエスプレッソをだばっとかけていくだけ。


 アイスと触れた部分は固まったり、一部はエスプレッソの熱で溶けたりしますが……これで完成です。



「へー??」


「飲み物じゃなくて……アイス??」


「放っておき過ぎると溶けてしまいますので……サービスですから、代金は気にしないでください」


「わーい!」


「いただきます」



 お客様達がスプーンで口に運ぶと……味は表情を見れば一目瞭然。とても美味しいと物語ってくださいました。



「美味しい!!」


「濃いコーヒーだから、苦めだけど……アイスと食べるとちょうどいい!!」


「これは、イタリアですと『アフォガート・アル・カフェ』と言うんです。エスプレッソ以外にも、飲み物の違いで名前が変わったりします。東京などのお洒落なお店でしたら、抹茶やほうじ茶、紅茶などでも多いそうですよ?」


「「へー??」」



 僕も試したのは、まだ数回程度ですが……アイスを仕込んでおけば、あとはエスプレッソを抽出すればいいだけ。テイクアウトも視野に入れると容器が必要ですが……賢也けんや君にもあとで試食してもらうので、OKが出たら買い出しをせねば。


 とりあえず、お客様からは美味しい美味しいとアフォガートは好評に終わりました。


 おふたりが帰られてから……僕は改めて、沙羅ちゃんにアフォガートを作りましたとも。

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