うる星やつらと日の女神さま

naka-motoo

だってうる星やつらが好きなんですもの!

 わたしの人生の中で好きな作家さんは何人もおられます。故人でもご存命の方でも、それこそノーベル文学賞を受賞なさった方の中にも大好きな作家さんがいます。


 けれどもプロの尊敬する作家さんということになると、たったひとり。


 高橋留美子さんです。


 小説家でもエッセイストでもなく、漫画家ですけれどもボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞できたのであれば高橋留美子さんが受賞なさったとしてもわたしは何の違和感も感じません。


 むしろどの小説家さんよりも芥川賞のシュールさも、直木賞のポピュラーさも兼ね備えた作家さんだと思っています。


 KADOKAWAさんのサイトにこういうエッセイをわたしが書くことを、けれども高橋留美子さんの偉大さに免じてどうぞお許しください。


 さて、うる星やつらです。


 今年アニメの新作ができるということで楽しみしかないのですけれども実はわたしは現在テレビをまったく観ない生活を送っています。それは両親の介護に関わる特殊事情がありますのでとりあえず置いておきますが、ひょっとしたらうる星やつらの新作を、焦がれているこのわたしが見逃してしまうことがかなり濃厚ですので、せめてこのエッセイを書こうと思った次第です。


 スポットを当てるのは、うる星やつらの中のひとつのエピソード。


『アマテラス宴会』


です。


 連載初期のエピソードのひとつですけれども、テレビアニメの最終話にも選ばれています。


 あらすじは天照大神さまの『天岩戸』の神話をほぼ忠実に再現していて、友引高校のあたるくんとラムちゃんのクラスが仮装大会で天岩戸をやることになったのですけれども天照大神さまの役をやる予定だったお雪ちゃん(原作では生徒です)が持病の癪で急遽出られなくなって困っていたところをテンちゃんのところに「わらわはアマテラスじゃ」と天から降りて来られたホンモノの女神さまが神様たちの宴会をやると聞いていたテンちゃんが間違って友引高校の仮装大会に案内してしまいそこであたるくんラムちゃんの仮装メンバーたちの中にホンモノのアマテラスさまやホンモノの八百万の神さまたちが入り込んでしまわれてうる星やつらの本領であるスラップスティックな大宴会に突入する、というものです。


 興奮のあまり一気に書きましたがあらすじは伝わりましたでしょうか?


 続けさせていただきます。


 最重要点はほんとうにほがらかに親しみ深い存在として神さまたちを描いておられることです。

 これは意図してできることではありません。ひょっとしたらこのエピソードを執筆なさっているその瞬間に天照大神さまを初め、八百万の神さま方が、「われらのことを描いておくれ」と高橋留美子さんにのりうつられたのではないかな、とわたしはホンキで思っています。


 実際、うる星やつらの随所に神さまたちは自然に登場なさいます。

 天神さまである菅原道真公もあたるくんの学年テストに協力(というか共謀?)なさろうと登場するエピソードがあります。


 そもそも、サクラさんという『巫女キャラ』を初めて漫画にお描きになられたのは高橋留美子さんなのではないでしょうか。


 クラマ姫と、その父親が実は幼少期を鞍馬山で修行なさっていた源義経であったというエピソードもそのひとつでしょうし、それらの象徴的なエピソードがこの天岩戸という文字通り日本という国の神さま方の大宴会だと思うんです。


 それぞれのエピソードは冴えわたるギャグで笑いを噛み殺すのに苦労するぐらいなのですけれども、そもそも日本という国の神話自体がとてもおおらかでやさしくなおかつほがらかなものであることを考えれば、ギャグ漫画というのはぴったりな表現なのだろうと思います。


 そして神話の中では性のことも人間が避けては通れないものとして真摯に温かく描かれていることを思えば、ラムちゃんの露出の多さや、『契る』と言った言葉尻だけを捉えて『破廉恥だ』と批判していたPTAの方たちは物事の本質を全く見誤っていたと言わざるを得ません。


 上は帝を初めとし下は卑賤のひとびとも逃れ難きは無常なり


 これはわたしが生前遭えなかった恩人の歌の一節ですけれども、わたし自身が『日月(にちげつ)の交わり』という長編小説を日の女神さまのまさに天岩戸のシーンが描かれたある神社に奉納されている神の絵をモチーフに書こうと思い立ったのは、間違いなくいじめに遭う子供の頃のわたしを救ってくれたうる星やつらという偉大な作品があったからだと噛み締めています。


 うる星やつら、あらゆる意味で日本が世界に誇るエンターテイメントだと思います!(o^^o)

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