終戦に安堵した夢

第14話 捕虜



 残り僅かだった軍はオーストリアまで後退し、防衛に従事していた。

 戦車は少なくて、元々配備されていた対空砲や擲弾兵を守るのが仕事になっていた。

 指揮官はベルリンに迫る敵を迎え撃つように命令されていたようだったが不可能だ。

 武器も人もここには無く、ベルリンへ行くまでの間にアメリカ軍がいる。

 そこへ移動する。それは戦うためではなく、投降するためだ。

 ソ連から逃げるためでもあったが、西側の連合国に投降する方が交渉し易いだろうという判断で、アメリカ軍の駐留しているミュンヘンへ向かう。

 そして終戦を待って、翌日に投降した。



 投降してすぐに、武器をすべて取り上げられて、いくつかに分けられた。

 病人と怪我をした者はどこかへ連れて行かれ、指揮官以外の僕たちは何もないところに有刺鉄線を張って入れられていた。

 生活はその有刺鉄線で囲まれた中だったが、昼間は街の道路の復旧をした。

 瓦礫をどけて、車の行き来をさせるためだ。

 他にも、線路に横たわる電柱を退かしたり、橋の残骸を撤去したりを延々とする。

 街の仕事は終わりがない。


 食事はひどかったが、死なずに済んだだけ良かったのかもしれない。

 テントは持ち物の中から使うことができたので、少しは凌げたが、雨の日はびしょ濡れだった。

 建物の庇の下に逃げて、寒さを凌いだ。

 持っていたブランデーを没収されてしまったのが悔しい。


 そのうち仲間のうちの何人かが伐採に出ていて、その木で小屋が造られていく。

 乾いていない木で建てるので、綺麗にならないみたいだけど、無いよりはいい。


 中にはこっそり看守と取引してタバコや菓子なんかを交換していた仲間もいた。

 しかし、皆がだんだんと痩せていく。

 野良犬のような扱いだったが、殺されていないだけましだと思うしかない。


 そのうち何人かまとまって何処かへ移送されていくようになったが、どこかの工事か船に乗せられるとかそんな労働に借り出されたようだ。


 僕も最後の方にはなったが、他の7人と船に乗せられた。

 仕事は簡単だ。ボイラーの石炭をくべて、荷の積み下ろしする。

 食事は相変わらずだし、休憩もない。病気になって死んだ者もいたが、あの脱出に比べたらどうってことは無い。

 生きている分、運が良かったと言えるかもしれなかった。

 ソ連が攻めてきた地域で捕まった者は、兵士であろうと民間人であろうと悲惨だったに違いない。


 船に一緒に乗った同じ収容所にいた奴に聞いたが、病人を山に連れて行き殺してしまった様だ。

 怪我をしていた者は女子供もいたし、兵隊だけではなかったと思うが・・・。


 また一人と仲間が死んでいく中で、僕も運が尽きれば死ぬのかなと思っていた。




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