恐怖の手跡
僕の名前は
ある日の夕ご飯を食べた後、僕がお風呂に行こうと思って、お風呂の前の洗面所があるところで服を脱いでいた時のことです。
「え!?」
洗面所にある大きな鏡に手のような跡がべったりとつき、それが下に引きずられたようについていました。僕は思わず声を上げて、それをもう一度恐る恐る見て見ました。どうやらやはり人間の手の跡のようです。僕はちょっときみが悪くなり、脱ぎかけの服をもう一度急いで着て、お母さんのところに行きました。
「お母さん!お母さん!なんか、お風呂の前の洗面所の鏡に、変な手の跡みたいなのがついてるよ!」
するとお母さんは、
「お姉ちゃんがつけたんじゃないのぉ?」
と言いいました。あ、そっか、僕の前にお風呂に入ったのはお姉ちゃんだったと、僕はほっとして、もう一度お風呂に入るために、お風呂の前の洗面所に行って服を脱ごうとしました。
ふと気になり、さっきの手の跡に視線を移すと、
「ひっぃ!!」
なんとさっきあった手の跡は一つだったのに、今度はいくつもいくつもあって、そのどれもがまるでもがいて苦しんだ後のように鏡に残っていました。
僕はめちゃくちゃ怖くなって、急いでまた脱ぎかけの服を着て、お母さんのところに走って行きました!
「お母さん!さっきより手の跡が増えてる!!」
「はぁ?どれどれ?」
とお母さんはお風呂の前の洗面所についてきてくれて、その鏡を見てくれました。
「何にもないじゃない。きれいなものよ」
「ほんとだ」
なんでか僕にはわからないけれど、さっきあった無数の苦しみながらつけたような手の跡は、もうどこにも無くなって、鏡はいつもよりもきれいになっていました。
「さっさとお風呂入っちゃいなさい!」
お母さんにそう言われて、なんだか怖いなと思ったけれど、僕は急いでお風呂に入ることにしました。
髪の毛を洗う時、目をつぶるから、もしも僕がシャワーで髪の毛のシャンプーを流して目を開けたら何かいるんじゃないかとか、後ろを振り返ったら、何かいるんじゃないかとか、そんな想像が頭に浮かんできて、僕はできるだけ急いで髪の毛を洗いました。
お風呂の湯船には、乳白色の温泉のもとが入れてあって、とってもいい匂いで気持ちも良いんだけど、お湯の中が見えません。
僕はもしかして、僕の足の間から、黒っぽいゆらゆらしたものがだんだん見え始めて、ずずずぅと、静かにゆっくり上がってきて、真っ黒な髪をした白い顔の目が血走った女の人とか出てきたら怖すぎる!と思いました。もしくは、急に足をギュッと掴まれることがあったりとか……まさか!……でももし……
想像するだけで怖すぎた僕は、お風呂の中が見えなくて、もしかしたら得体の知れない何かが潜んでいるようなお湯に浸かっているのかもと怖くなって、もし動きに反応して出てくるタイプだったらまずいなと思って、ゆっくりと音を立てずに、立ち上がり、お湯から片足ずつお湯を揺らさないように気をつけながら足を出して、もう片方も慎重に足を出して、両足が出たところで急いでお風呂を飛び出しました!
タオルを棚から出して、体も拭かず、見せたくないとこだけ隠して、脱いだ服を手に急いで持って、お母さんのいるリビングへ駆け込みました!
「どうしたの?裸で!?」
お母さんは早く体拭いて風邪ひくし、リビングの床が濡れちゃうじゃないと僕に言っていたけれど、僕はなんだかよくわからない恐怖心に心が支配されちゃって、その後はとにかく急いで適当に体を拭いて服を着ました。
「どうしたの?そんな急いで、顔色も悪いよ?」
お母さんがいつもとは違う、明らかに恐れおののいて動揺している僕に聞いてくれたけど、僕は、さっきの手の跡って言ったらまた勘違いって言われると思って、何にも言わないでいました。
「早く髪の毛乾かして、明日の学校の準備してね!」
お母さんはそう言いながら洗濯物を畳み始めました。僕は髪の毛を適当に乾かして、急いで二階の自分の部屋に行って、みんながきっとオンラインでゲームしてるだろうから、そこに混じって、怖さを早く捨てたいと思いました。
ゲーム機のプレマを立ち上げて、フラバトに急いでログインすると、リーくんがゲームをしているのがわかった僕は、急いでリーくんのアカウントを選択して、ボイスチャットをつなげました。
「ヒュー、まさやんちわちわ!今日誰もやってないから俺っちつまんなかったぜ!まさやんこれからデュオ行こ〜ぜ〜」
と呑気なリーくんの声を聞いて、僕はやっとほっとすることができました。よかったリーくんがいて!これはいつもと変わらない毎日だ!
僕はリーくんに実はさっきさと言って、ネタ程度にさっきの手の跡の話をしてみました。もちろん!お風呂の中で僕が怖かったってことは言ってないですよ。
「へぇ、その手の跡って、ゆうちゃんじゃね?」
ゆうちゃんというのは僕のお姉ちゃんで中学三年生です。確かに僕の前に入ったのはお姉ちゃんだし、ありよりのありだなと僕は思いました。
きっとそうだ。学校では隠キャだけど、家の中では明るいしお姉ちゃんでいばってるし、やっぱりリーくんのいう通り、ありよりのありだともう一度思いました。よかった!オンラインのボイチャでリーくんと話せて!
僕は安心してゲームをリーくんと二時間ほど楽しんだ後、ぐっすり眠りにつきました。
翌朝。隠キャのくせして家では僕にいばるお姉ちゃんに僕は言いました!よくも僕にいたずらして怖がらせたな!という感情を込めて!殴り合いになっても構わないくらいの気持ちで!
「お姉ちゃん昨日僕がお風呂に入る前に変な手跡つけて僕を怖がらせようとしたでしょ!」
「はぁ?!なんのこと?!受験勉強で塾のリモート授業受けてた私が、なんでそんなめんどいことしなきゃいけないの!」
「え?…じゃぁ、鏡の手の跡はお姉ちゃんの悪戯じゃないの!?」
「そんな暇じゃないわ!受験生なめんな!」
僕は頭がこんがりがりました。お姉ちゃんのいうことが確かだとしたら、二回目の手の跡が増えてたことや、お母さんと見に行った時にそれが消えていたことはどうやって説明がつくんだろうと僕は思いました。
こわっ!!!! もう一人でお風呂に入れない!
もう僕は泣きそうです。
誰とお風呂に入ればいいんだ!
お父さんは帰りが遅いし、お母さんやお姉ちゃんは絶対無理だ!
自分の体の変化くらい保健で習ったから知ってるし! ああ、お風呂が怖い!
これが、僕はもうお風呂に入らない方がいいのかも知れないと真剣に思った、ある日の不思議な出来事のお話です。
*********
「どうだった?まさやん?」
「えー、超びっくりして怖がってた!」
「だよねだよねー!うちも!」
「ゆうにも手伝わせたから、まんまと引っかかって泣きそうな顔してたわ」
「夏やしな!今年はコロナで集まれんから、自作のお化け屋敷で謎解きできんしな!」
「そうやそうや。ちょうどいい感じの自宅お化け屋敷みたいやったよ!」
「めっちゃ大成功やん!」
こうしてまさやんこと金田勝は、コロナで集まれないからと、ママーズたちがグループRINKで、「各自自宅で怖がらせて今年は楽しもう企画」をしていたことを、秋になった今もまだ知らない………
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