まじない課!

まろんけーき。

第1話 御籤は末吉...恋なんか始まる気配なんて微塵もない!!

 本日は晴天。


 雲ひとつない澄み渡るような青空がどこまでも広がっている。


 生暖かい風が、下から上へと吹き上がり、満開であった桜の花をひらひらと散らせる。


 まるで粉雪のようにひらひらとー



 風向きが変われば、その花びら達は、己の意思など微塵もないようで、進行方向を変えると、くるくると宙で舞い踊った。



(また末吉か...)

 心の中で小さく落胆する。


「桜の所の御籤を引いても、出会いも恋もなーんにも始まりそうな気配がしないんだけど...」




 今日は、高校の入学式があった。

 その帰り道、小学校からの幼馴染である暁月あかつき さくらの家の神社に寄った。


 そして私、飛鳥あすか 沙良さらは幼馴染の桜と供に今年度の運勢を占うべく、賽銭を入れ、御籤を引いたのだ。



 私の手の中にあった御籤の細長い紙をピッと引き抜くと、桜はその言葉に抑揚を付けずに冷静に言い放った。


「沙良の行動力の無さも、モテないのも、うちの御籤の所為にしないで頂戴。」


 私から奪った御籤の紙を桜は広げ、その紙に目を落とした。


「ほーら、御籤にも書いてあるわよ。〝焦らず忍耐強く待つべし。のちに現れる。〟って。」


「〝後〟っていつよ?私は一体いつまで待てばいいの?前に引いた時だって、〝今はまだ早い現れぬ。〟だったじゃん...」


 私は今年の初詣の記憶を思い起こしていた。

 あの時も、末吉だったなぁ〜。と...


 私は肺に溜まっていた淀んだ空気を一気に吐き出した。


「桜んちの神社の御籤って、末吉の割合が多いんじゃない?」


「そんな事は無い筈だけど...ちゃんと、大吉も入っているわ。沙良だって、前よりは少しは進歩してるんじゃない?現れぬから、暫し待てになった訳だし。」


「...本当?」


「...じゃない?」

 桜は自信なさげにそう曖昧に言った。


「何その適当な返答。」


「私は神様じゃないから、分からないわ。」


 そう言いながら、桜は御籤の棒の入った六角形の筒を混ぜるように振ると、逆さまにした。


 するりと、御籤の棒が一本顔を出す。


 桜は、棒に書いてある数字を読むと、小さく呟きながら、その数字が書いてある引き出しを見つけ、中から御籤の紙を取り出し、結果確認した後で、私にその御籤を差し出した。


「ほら、私は大吉よ。」


 私が立てた半ば難癖のような〝末吉しか入っていないんじゃないか。〟と言う仮説が違う事を桜はこうもアッサリと身を以て証明したのだった。


 どうやら、私が末吉を引くのは私の運命に他ならないようで、そうとなれば、最早 神頼み以外変えようが無いではないかー


「私、来る度とは言わないけれど、三回に一回はお賽銭を入れて、その神様に頼んでるんだけど、ここ本当に恋愛の神様なのよね?」


「そうねぇ〜 恋愛ってゆうか、縁結びと言った方が正しいかしら?」


「縁結びって要は恋愛じゃないの?イコールでしょ?」


「縁って言うのは、人と人との繋がりや出会いの事を言うのよ。だから、縁結びは恋愛に限ったものじゃないわ。」


「ふーん。そうなんだ。」


「そうよ。まあ、高校入学して心機一転なんだし、高校生活に馴染む事の方が先じゃない?それに、ほら、沙羅は今年の春から、一人暮らしになったんだし。そっちの方が大変でしょう?」


「うん、まぁ...ね。」


「何か困り事や、ご飯食べれなくなったら、いつでもうちに来なさいよ。」


「うん。桜ありがとう。」












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