黒銀の守護竜
星月 猫
黒銀の守護竜
とある
そこは、濃く深い森の中。
古い古い木々が生い茂る森の最奥にあるは──周囲の数倍はあろうかという巨木。
その裏にある洞窟こそ、
***
黒銀の竜はこの森の守護者であった。
災いが来ればそれを倒し、天災に襲われれば森の住民たちを助ける。
それこそが守護者たる由縁である。
彼女は親からその役目を継いだのは、もう100年以上前のことだという。
そして、最後に見た同族もその両親だった。
そう。
彼女は両親以外の同族と出会ったことはなく、今では
***
そんな彼女に出会いがあったのは、雷鳴轟くある夜のことであった。
10数年に一度とも思われる豪雨の中、黒銀の竜は森を飛び回っていた。
願わくば
ひとりでも
一頭でも
一匹でも
多くを救うため。
その一心で彼女は森を駆けた。
駆けて、駆けて、駆け抜けて。
何度も森の住民たちを安全な場所へ誘導し、送り届けた。
どれだけそうしていたか。
見付けた住民たちをあらかた助け終わった頃だった。
彼女の目の前に“ソレ”は落ちてきた。
閃光と共に、ひときわ大きな雷が。
光が収まった時。
彼女は
白銀を、見た。
***
住処を追われ、守るべき友を、共に戦う仲間を失った白銀の竜がいた。
彼もまた、土地守る者であった。
守護していたはずの地は炎に焼かれ。
必死に助けた生き物たちは、後からやって来た人間共に狩られた。
怒り狂った竜は彼らを焼き滅ぼしたが……その身は傷付き、自慢の白銀は煤けてしまっていた。
何もかもをなくした彼は、痛む体に鞭打って空へと飛び上がった。
何処とも知れぬ、死に場所を求めて。
そして、長い長い旅の果て。
白銀の流星は辿り着く。
黒銀の夜空が守護せし、太古の姿を今に残す深き森に。
***
そんな事もあった。
そう、竜たちは笑う。
目覚めた見慣れぬ場所に戸惑い、暴れた流星の頭を踏み付けられて止められたと白銀の竜が微笑む。
照れ隠しか尻尾で彼をはたこうとした黒銀の竜は、己が抱えるモノを思い出して中途半端に動きを止めた。
そしてまた、白銀は笑う。
慌てる黒銀は、むぅと唸って“ソレ”を己の尻尾で巻き込み丸くなった。
***
森の住民たちは言った。
彼らは優しい眼差しで、抱えた濃茶の卵を見つめている。
我が子が生まれてくるその時を、守護者たちは待っているのだと。
黒銀の守護竜 星月 猫 @hosidukineko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます