09「仲間たち」

 シルヴェリオが庭で剣を振っていると、手配されていた最強パーティーのメンバーがやって来た。三名だ。

「もうすっかり、大人になってしまいましたね」

 リーダー格の女子が口を開く。沈着冷静な剣士で名はデメトリア。

「当たり前だ。それほどご無沙汰でもあるまいが、久しぶりだな。皆元気か?」

「はい。本日はどのようなご要件ですか?」

 この三人は子供の頃から戦闘スキルの訓練相手として付き合いがあった。

 領地の警備クエストなどで時々顔を合わせるのだが、やはりお互い幼少の頃のイメージが強く残っている。

 会うのは久しぶりで、皆同年代か若干年下である。

「ダンジョンに潜る。どうやら貴族にも、武芸とやらも必要なようだ」

「だから子供の頃に稽古してたニャン」

 おかしな言葉で喋るのはチェレステだ。

 猫の特性に似たスキルを持ち、このような言葉を使えばより使いこなせると信じていた。まんざらウソ話でもないらしい。スキルとは不思議な力なのだ。

「私もシルヴェリオ様が、どれほどの力を発揮するのか興味があるよな~」

 カールラは魔法と、それを応用しての弓矢が武器である。もちろん剣も使う。

「少し話そう。時間はあるか?」

「大丈夫です」

「今日のクエストは終わりニャン」

 四人は庭に張り出したデッキ席に移動した。イデアが手回し良くティーワゴンを運んで来る。

「さて、用件は聞いているか?」

「同じ学院の生徒がダンジョンにデビューするとか。それを追うのですね?」

「そう、相手に悟られずにだ」

「めんどくせーなあ。昔からそっち系のスキルを持っていたよな」

「より強力になったぞ」

「追っかけより力ずくの方が早いよ」

「貴族同士はそうもいかん」

 冒険者とは違うのだ。領地同士のいさかいは外部の介入を招き、より事態は複雑化する。やるならば新天地を二人だけの楽園とし、他とは完全に縁を切らねばらない。

 イデアがメモを差し入れる。デメトリアは一瞥してポケットにしまい込む。

「この令嬢ですか――。中央教会の名簿を閲覧しますよ。どこの教会に通っているか確認します」

「頼むぞ!」

「それから、旦那様からはシルヴェリオ様の力について見極めよ、と指示を受けております」

親父おやじ殿め……」

「魔獣と戦う力を鍛えるニャン」

「私は芸術の人間だよ。それからシルヴェリオ様はまずいな。冒険者を装う」

「じゃあ子供の頃と同じシルヴにしようぜ! そっちのほうが簡単だ」

 しばしお茶とスイーツの時間となった。

「しかし女の尻を追いかけて何が楽しいのかねっ!」

「尻ではない。胸だ。いや、全身だな。心を含めて全てだ」

「だから何が楽しいのって――」

「じゃあ、お前はどうなのだ?」

 カールラは少し考え込む。

「獲物の数だな。それを相手にアピールする」

「却下だ。次!」

「猫の場合は――」

「次っ!」

「何だニャン!」

「やはり剣で語り合うべきではないでしょうか? その令嬢様に組打ちを申し込んでみては? 互いに剣筋で心をさらけ出します。そうすれば――」

「話にならんな。まったく参考ならんっ!」

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