第24話 魔法剣炸裂!ソードマスターアルダー王


 アルダー王と紅葉さんの戦闘が始まった。


 紅葉さんがアルダー王の元へと走る。先に攻撃を仕掛けるのは、紅葉さんの方になりそうだ。

 

 「フレイムザッパー!」


 紅葉さんがお得意のフレイムザッパーで攻撃を仕掛ける。


 アルダー国王は剣を構えると。


「水の精霊ウンディーネよ。その清らかなる魔力マナとともに、我が剣に宿れ!」


 そういうと、剣の柄から水が螺旋状に渦巻く。


「これが俺が編み出した技。魔法剣だ」


 走っていた紅葉さんは立ち止まる。


「魔法剣? はっ、ただ剣に水を纏ってるだけじゃねーか」


「ただの水ではない。水の精霊ウンディーネから預かった魔力マナで作られた魔法の水だ。魔法剣は精霊から魔力マナを借り、その魔力マナを剣に付与する事で使用する事ができる技だ。付与するのにもかなりの技術がいる。まず、精霊から魔力マナを預かる事がとても難しいのだよ」


「精霊? はっはは。ギルド対抗戦の雑魚キャラじゃねーか。まあいいや、戦闘の続きだぁ!」


 紅葉さんが言いたいのは、フェアリーで妖精のことだろう。精霊と妖精はまったく別のものなのだが……。


「では、お主が嘲笑する、魔法剣の力受けてみるがいい」


 紅葉さんは再び走り出し、フレイムザッパーの攻撃を用意する。


「おらぁ! くらいやがれ!」


「『魔法剣まほうけん水連すいれんながし』」


 水を纏った剣が紅葉さんの剣を華麗に受け流す。

 

 バランスを崩した紅葉さんは床に倒れ込んだ。


「……っな!? 何が起こったんだ? 剣を振り上げた瞬間、急に剣が吸い込まれた感覚があったと思えば、気づけば、俺は床に倒れていた? どうなっている?」


「魔法剣水連流し……どうだったかね? 急に自分自身が倒れたからびっくりしただろ。水連流しは対象の物理攻撃を無効化し、引力を使い別の方向へ持っていくことができる技だ。CT《クールタイム》も長いがな」


「物理攻撃限定だけど無効化しつつ、別の場所に引っ張れるのは強いな。あらかじめ落とし穴とか作っておけばそのまま落とし穴に落とす事も可能だな。考えれば考えるほど、面白いコンボに繋がるアクティブスキルだね」


「そんなのありかよ。攻撃無効とかチートすぎんだろ。CT《クールタイム》があるって事は連続で打てないって事か」


 魔法剣……ゲームの時には見なかった技だ。精霊を使用する事で使うことができるのかな? 

 

 ゲームの時にも誰か作っていたのかもしれないが、僕は見たことがない。リメイク版からの新要素の一つなのだろうか?


「トワさん、アルダー王の魔法剣凄いだろ? もっと凄い技があるんだ」


「そうなんですか! 楽しみだなぁ」


 紅葉さんは立ち上がり剣を振るう。


 が、しかし、アルダー王が弾き返す。


 紅葉さんは距離を取りスキルの準備をしている。


「物理がダメならこれはどうだ。爆炎ばくえん熱波ねっぱ!」


 城内を包み込むように、炎の波がアルダー王に向かう。


 アルダー王は剣を床に突き刺し。


「範囲が広いな。可愛いリーフィスに当たったらどうするんだ。『魔法剣水ウン精霊ディーネスプ遊び《ラッシュ》』」


 突き刺した床から円状の水が拡散するように溢れ出す。


 その拡散した水の一部が炎を包み一瞬のうちに消え去った。


 残った水は円状のまま、地面を跳ね続ける。


「なんだ? 炎が消えたかと思ったら水が跳ねてるだげじゃねーか。ビビらせやがって」


 鼻で笑うアルダー王。


「水精霊の水遊びの恐ろしい所はこれからさ。続きといこう」


 床に突き刺した剣を抜き、ダッシュで紅葉さんに近づくアルダー王。


 紅葉さんは何かモタモタしているようだ。


「ちっ、なんだこれは、足に絡まって上手く動けねぇ」


 紅葉さんの足元には先程の水が両足に絡まっている。

 

 モタモタしている間にアルダー王がスキルを放つ。


「『キングス・レイド』!!!」


 アルダー王の剣の一閃で、水が勢いよく上空に弾け飛ばした。

 

 紅葉さんも三メートルほど吹き飛んだ。


 弾け飛んだ水にも攻撃判定があるようで、『キングス・レイド』と水のスリップダメージで紅葉さんのHPが四割近く減った。


「体のあちこちがいてぇ。これがパラディンの実力かよ。しょうがねぇ。あの手を使うか」


 紅葉さんはかなり卑怯な人なので何をするか分かったもんじゃない。


 また後ろから足音が聞こえる。またプレイヤーが集まったらしい。


「トワさん。次の敵が来ましたね。一緒に戦いましょう」


「了解です。足を引っ張らないように頑張りますね」


「見つけたぞ。あそこだ。紅葉さんのカバーに入るぞ!」


 グーファーさんのような銀色の鎧を纏ったプレイヤーたちが集まってくる。

 

 僕とジークさんは再び敵プレイヤーと対峙する。


「魔法剣に続き俺のスキルをまともに受けて、まだ立ち上がるとは、その精神だけは認めてやろう。だが、諦めろ。パラディンとソードマスターでは格が違うのだ」


「ごちゃごちゃうるせえよ。別にお前に直接、真正面で勝たなくてもいいんだよ。今に見てろ。その余裕の顔が絶望の顔に変えてやるよ」


「ほぉ。この俺を絶望させようというのか。まだ力の差が分からんようだな。残りのHP四割もない。今なら見逃してやるからここから立ち去れ」


「俺はずっとどうやったらお前に勝てるかを探していた。そして見つけた。お前の最大の弱点を!」


「なんのことかは知らんが、ここから立ち去る気はないようだな。では、死んでもらおうか……。お前らプレイヤーは死んでも教会行きだったな」


「あぁ。俺が死んだところでまた復活できる。そして何度も何度でも! お前らを苦しめてやるさ」




「よし。またプレイヤーを教会送りにしたぞ。経験値が美味しいな」


 ジークさんが物騒な事を言い出した。


 まあ美味しいのだろう。僕は倒してないのでフルの経験値は貰えないが戦闘に参加しているので、ジークさんが倒したら少しだけだが、経験値が入っている。


 紅葉さんは立ち上がっていたが、フラフラして少し離れた所に尻餅をつくように倒れた。


 リーフィス王女はアルダー王を心配に思ったのか、救急箱を持って小走りで近づいてきた。


「父上。お怪我お手当します」


「がーはっはっは! これを待っていた! 俺の勝ちだぁぁぁ! 娘もろとも死ねぇぇぇ!!」


「リーフィス!!! 危ない! 俺から離れろ!」


 紅葉さんは手に隠し持っていた物をリーフィス王女とアルダー王の中心に投げた。


 アルダー王は剣を捨て、リーフィス王女を突き飛ばす。


 何かが床に当たると、とても眩しい光が城内を包み込み、次の瞬間轟音とともに爆発した。

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