エピソード2:ノワール級戦艦の悲劇

 ノワールが出航して一ヶ月が経過した頃、数年前に沈没したゴッドバウンド号とエリエステル号の事件現場に近い海域を航行していた。


「祝砲、挙げろ!」


 ノワール級戦艦の艦長であるサクラ・ダマスは伝声管で指示すると、伝声管から副艦長の声が聞こえてくると同時に艦首にある単装15口径155ミリ砲塔が発砲し始めた。


 計3発を撃ち終えると、警笛が鳴り響き死者をとむらった。その後、この海域を一刻も早く立ち去ろうとしたノワールの左舷から水柱が2本上がった。


「な、なんだ?!」

「わかりません! しかし、魔物になった魚類魔魚では無いです!」


 船員の1人が左舷に駆け寄り、指差して「魚影だ!」と声を上げると同時に今度は艦尾に水柱が3本も上がった。その結果、突然的に速度が遅くなり4本もある煙突のうち2本から煙が上がらなくなった。


「速力、低下!!」


「スクリューをやられた!」


「機関室、浸水中!!」


 各所から報告が上がってくる頃には、左に15度も傾斜しながら航行していた。


 速力が低下して30分後、ノワール号では賢明な応急手当を施していた。


「早く! 排水作業を急げ!」


「いや、それよりも右舷に注水したらどうでしょうか?」


「ダメですヨ!機関室を修理してからにしないト!」


 船員が慌てる中、艦長が重々しい態度で「総員、最上甲板へ・・・」と言い放った。


 ちなみに、“離艦”とは直せず言わずに“最上甲板”と遠回しに言うのは、軍艦ならではである。


「クソ・・・! 神はこのふねを見捨てたのですか?!」


「早く、この船から離艦しろ。 そして、家族の元に生きて帰りなさい。俺にはもう、待つべき人が居ないから。 君たちだけでも」


 艦長にも勿論もちろん家族が居た、しかしゴッドバウンド号事件で婚約者と両親が帰らぬ人になった。


「そ、そんな・・・。 艦長こそ、生き残るべき存在であります!自分は、あなたの様に優柔不断では無いのであります!」


「ふっ・・・。 そうか、俺がみんなの希望と言うことか・・・」


 その時、ふねが激しく揺れて船員と艦長が居た作戦会議室ごと大爆発して乗員126名がふねと共に海底に沈んでいった。

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アディス級潜水艦、潜航せよ!『総合3,069PV』 @12{アイニ} @savior1of2hero

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