#16 攻勢と劣勢

 敵兵士の無惨むざん亡骸なきがらが瓦礫に交じっている中を、KLX250に跨り銃を背に回して移動している人影があった。その後ろを偵察や威力偵察に特化した87式偵察警戒車が付いて来る。


「惨いわぁ・・・」

『そうですね、隊長・・・。 いやぁ~、艦長は短気と見た』

「失礼なことを言うンじゃないよ、まぁ・・・あたしも今思って居たけれどさ」


 インカムから87式に乗って居る小隊員達の吐き気のような声や十字架を捧げる声が聞こえて来た。


『隊長、5ブロック先を左折でナームス傭兵国城の正門前です』

「分かった。 全車、戦闘警戒」

『了解』


 左に曲がりしばらく進んでいると、しっかりとした造りの城門が見えて来た。


『城門壁上に、敵兵士を発見!』


 KLX250から降りると同時に矢が飛んできたのでネルスはそれを間一髪で躱して「――危なっ! 撃って来た、総員。配置に付けぇ!」と指示を出しながらTP-45の銃口を城門壁上に向けて撃ち始めた。


 暫く交戦していると、インカムから後方を進んできていたトポス隊からネルス隊への『こちらトポス隊、加勢する』という加勢伝令が入った。


「城門前で交戦中だ、すぐ来てくれ!」

『了解、到着まで2分』

「それと、ついでに潜水戦艦本隊に連絡してくれ!」

『――了解コピー


 インカムが切れると小隊員達に「増援が来る、1分後だ!」と銃声に負けない声量で叫んだ。


  ○○〇


 1分後。弾薬が付きかけたまさにその時、トポス隊の16式機動戦闘車1両やM2歩兵戦闘車のブラッドレイ2両、M2重機関銃が付いた高気動車ハンヴィー1両が姿を現した。


「もう! 遅すぎ!」

「各車、一斉射撃! ごめんね~、待たせ過ぎたね~」


 ネルスがトポスを怒鳴りつけようとしたその時、M2重機関銃や16式機動戦闘車の銃声音で聞こえなくなった。


「・・・」

「・・・」


「ああ、もう! 知らない!」


 城門壁上から矢を放っていた1人の敵兵士に、トポスのメイン武器であるM416の使用弾である5・56×45ミリNATO弾が数発当たり鮮血を迸りながら墜ちて来た。


「ウッ、ガッ、ハッ・・・――」


 そこにインカムから『こちらノヴェラス、ルーマス隊を至急支援隊として派兵した。 それと、もう一度、艦砲射撃を行う。座標を言ってくれ』という連絡が入った。


「こちらネルス隊! 座標はD《デルタ》39、繰り返すD《デルタ》39! 至急、艦砲射撃を要請!」

『・・・D《デルタ》39だな? 分かった、発射まで30秒と着弾まで20秒』

「――りょ、了解!」


 インカムがオープンチャンネルだったことが災いし、連絡が切れるとすぐに一時退却の雰囲気になった。


「――全員、耳にしたな⁈」

「はい!」

「よし、撃ちながら後退しろ!」

「はい!!」


 しかしその時、城門が突然開いて中から銃や盾などを持った黄土色おうどいろのロボットが現れた。


「うそ・・・でしょ?」

「なにあれ・・・⁉」


 その時、インカムから『主砲弾発射、着弾まで20秒』という連絡が入った。


「こちらネルス、2体のロボットが城門より出現! 盾と銃を持っている!」

『・・・なんだと?! チィッ、分かった。 誘導徹甲弾に切り替える、再装填まで30秒だ。足止めを頼む!』

「りょ、了解!」


 一時撤退中でも撃つのを辞めないでいると『初弾。榴弾、弾着――今!』というインカムが入ると同時に地面から爆発が起こった。


 しかし、くだんのロボットは歩みを止めずに真っすぐこちらに向かって来ていた。


「前線より着弾結果、全弾命中。されど、ロボットには効果なし」

『了解。 第2次砲撃を開始した、着弾まで15秒』

「了解!」


 ネルス達が必死に撃ちまくっている頃、ナームス傭兵国にある唯一の河川を5隻の強襲支援舟艇SBT-22がネルス隊やトポス隊を支援するために進んでいた

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