3,命の尊さ
#06 潜水艦戦術
エウランド皇国沖から生きて帰って来たベラス達は、6年前から有名な噂になっていた“鉄鯨”の正体をこの世界には存在しない科学で出来た船だと明かした。結果、エウランド皇国以外にも同盟を望む国が増えて来たのである。
2年後、アディス級潜水艦は今ではナームス傭兵国に恐れられる
理由は、ナームス傭兵国船籍の輸送帆船や砲艦、魔導帆船を最も撃沈させているからである。
そして、
撃沈数1500隻を誇るアディス級潜水艦は、ナームス傭兵国がノヴェラス・ディルスと同じ
○○〇
3ヶ月前に、話は遡る。
いつも通り、エルドリア海を航行していたアディス級潜水艦は突然この世界にない洋上を航行する艦船が対潜水艦のためだけに使う対潜爆雷の攻撃を受けた。
「――第1居住区画に浸水!」
「
「
アディス級潜水艦が失速しつつ海底に強く当たると同時に、艦内が無音になった。
「これで、騙されてくれればいいのだが・・・」
そう、敢えて激しい音が鳴るようにしたのは撃沈したと相手に誤認させるためだ。
しかし、
「ソナーに感有り!」
「なんだって・・・?」
――つまり、誤認作戦は失敗だ。
「アクティブ・ソナー、来ます!」
「ティルス、エアータンク・ブロー‼ノーヴァ、それと同時に
「りょ、了解!」
「艦尾より、発射。展開まで3秒!」
ノヴェラスが全周囲ディスプレイ・パネルを見るとソナーと書かれた画面にDECOYと書かれたマークが1つ艦尾に表記された。
「デコイ、展開完了」
「嘘でしょ、敵も魚雷を⁈」
「ん?」
「敵魚雷が7時方向より接近中!」
「7時って、艦尾じゃン!――それと、魚雷って噓でしょ⁉」
「(もしかしなくても、俺と同じか?いや、だとしたら・・・相手は潜水艦戦闘だと思っているのか?待てよ・・・?だとしたら、相手は
ノヴェラスが考えている間にも接近して来ていた魚雷は、途中で向きを変えてまるで場所を知らないかのようにフラフラと航行し始めた。
「レイ、潮流移動にしよう」
「え?」
「潮流を使えば、タービンを使わずに移動できる。潮流地図を出してくれ」
「なるほど・・・良い案だね、ノラス兄さん」
「だろ? 早速で悪いが、
「は、はい。こ、こちらが今朝の潮流予想図です」
中央に設置されている蛍光卓に、エセスが趣味で書いている潮流予想図の紙を乗せて現在位置を磁石で示した。
「南から北に向けて流れる潮流が1本だけか・・・」
「そうですね、予想だと・・・」
「囮を先行させて、その後ろからついて行く。それがダメなら、戦闘だな」
○○〇
しばしの沈黙の後で作戦会議を終えると同時に、艦長席に座りなおしたノヴェラスは「全艦、
「――デコイ、先行開始」
デコイを動かすと同時に、海中を
「デコイ、ロスト!」
「――クソッ、ダメか・・・。艦対水上戦闘、用意!ノーヴァ。1番と2番発射管に魔導式魚雷を装填、発射パターンは任せる。準備出来次第、発射!」
「1番と2番、準備完了。発射始め」
「――続いて、3番に二酸化炭素魚雷装填!」
「3番、準備良し」
「――発射指示、待て」
「
水上を航行していた敵はそれに気が付いたが、時すでに遅かった。2本の魚雷が艦底部を破壊し、浸水を2カ所発生させると、その対応に追われ始めた。
直後、航跡を残さない二酸化炭素魚雷が停止していた敵艦に命中した事で緩傾斜だった艦が、75度にまで傾くとしがみ付いていた船員たちを道ずれに沈んで行った。
「浮上しろ、潜望鏡深度へ!」
「深度10へ、潜望鏡上がる」
海面に突き出した潜望鏡を覗くと、黒煙を吐きながら沈んで行くアメリカ海軍のフレッチャー級駆逐艦が見えた。
「フレッチャー級駆逐艦か・・・?だとしたら、なんで・・・?」
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