1,アディス級潜水艦

#01 アディス級潜水艦

 エルドリア海の深海150メートルという海底に、その“鉄鯨”は停止していた。


 第二次世界大戦時に旧日本海軍が建造した伊号潜水艦の400型がモデルの本艦は、船体の全長が462・6メートルで全幅128・8メートルという大きな鉄で囲まれた身体だ。


 さらに、基準排水量が23万8000トンという身体のでかさの割に使用している機関炉も超高速動力を発生させるようにタービンに魔導機関炉4基とボイラーに補助魔術式機関8基を使用しているため通常の推進装置スクリューではすぐに壊れてしまう。そのため、本艦は伊400だったころの推進装置スクリュー撤廃てっぱいして新たにシュラウドリング付き推進装置スクリューという推進装置をメイン用に1基とサブ用に4基を取り付けている。この改造により、洋上航行時の最大速力が20・5ノットで潜航時の速力が27・6ノットと化物級の速度を有している。


 この伊号潜水艦の400型がモデルのふねの名は、アディス級潜水艦である。


 洋上迷彩色には空の色と見分けがつきにくい群青ぐんじょうとなって居るが、この潜水艦は異世界ならではのロマンのかたまりである。


 理由を――長くなるが、説明しよう!


 主兵装は艦首部魚雷発射管8本と40口径62・6センチ連装主砲塔3基6門、副兵装に艦尾部魚雷発射管8基。特殊兵装には艦首部と艦尾部に特殊垂直発射管SPVLSを合計で64セルを搭載しており、主砲塔で使用する砲弾には≪魔導信管弾VTM砲弾≫と≪通常砲弾≫を採用しているが≪通常砲弾≫には弾種自由変更機構が備わっている。弾種自由変更機構とは、榴弾りゅうだん徹甲てっこう弾、焼夷しょうい弾などの多彩な弾種に自由に変更できるという言わば“チート”を持った通常砲弾である。


 特殊兵装用には≪追尾式艦対空迎撃兵装STAM≫と≪艦対地兵装クルーザー・ミサイル≫が搭載されている。更に、魚雷にもロマンを詰め込んで艦首用魚雷には〈二酸化炭素魚雷8本〉と〈魔導式魚雷16本〉を採用、艦尾用魚雷には〈誘導式魔導魚雷4本〉と〈音響魚雷8本〉、〈デコイ魚雷8本〉を搭載している。


  ○○〇


 エルドリア海の海底で停船していたアディス級潜水艦の乗員は、たったの9名だけだ。


 艦長のひと種族ノヴェラス・ディルス【男】と副艦長でひと種族ノヴィスの妹でもあるレイクッド・ディルス【女】、水雷長の海人うみびと族ノーヴァ・ミルス【女】、機関長のドワーフ族ティルス・エスタ【女】、電探ソナー長を務める鳥人ちょうじん族レヴェル・ノーラ【女】電探レーダー長でレヴェルの妹でもあるデゥーフ・ノーラ【女】、航海長の亜人族エセス・ヴェルリア【女】、エセスの姉でもある砲撃長のルドゥリア・ヴェルリア【女】、最後に電信長のカトリーナ・メイルケイス【女】という構成だ。


 ヒトから見れば、「ハーレム、羨ましい!」と興奮するだろうが・・・。現実で考えれば、男1人な上に力関係が女の方が強いという事になって居る。


 そんなアディス級潜水艦は、毎日が真剣そのものだった。


「――現深度150メートル。空気残量はあと半分」


 機関長のティルスは空気エアータンクと書かれた計器を目で見ながら、発令所全体に響き渡る声で現深度と一緒に話した。


「浮上しようか、よし浮上しろ、アップトリム最大!」

「はい!ベント開け、アップトリム最大‼急速浮上!」


 艦長のノヴェラスが発令すると隣に居た副艦長が、それを復唱してユックリと船体が浮上していった。


 潜望鏡やシュノーケル、洋上用射撃観測器が詰まった洋上用司令塔フィンが海面に現れると同時に、艦首の舳先へさきや主砲塔などが姿を現した。

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