やってきた薬師ー⑩
「ん…」
カナリヤは目を覚ました。
「あれ…ここ」
起き上がりぼやけた目を擦りながら見渡す。そこはさっきまでいた森ではなく城の中の自分の部屋だった。
あまり記憶が思い出せず頭を叩いていると
コンコン
ドアが開いた。入ってきたのはシャリングだった。
「あ、カナリヤ!起きたのか」
「あ、うん。シャリング?私をここに運んでくれたの」
「うん。急に倒れたからビックリしたよ」
「ごめん…」
(ああ、私雨を見て倒れたのね…)
「ほらこれ食べな。国王も心配してたよ」
「そう」
シャリングが渡してきたのはお粥だった。城の中でもお粥なんてものはあるのか。
なにか嫌な予感がした。カナリヤはベッドから出て調合室へ行った。
棚から取り出したのは一つの瓶。それを持ち出した。
「それなんだい?」
シャリングが気になり聞いた。カナリヤは何も言わず瓶の蓋を開けそれをお粥にかけた。
「な、何をしているんだ?」
するとお粥の色が青色になった。
「なんだこれ…」
「シャリング。これ誰から渡された?」
「え…っと。厨房から…」
「はぁ、ったくダル」
つい汚い言葉を吐き捨ててしまった。
「カナリヤ…?」
「あ、つい言っちゃった」
カナリヤの顔からは笑顔が消えていた。カナリヤではなく別人のようだった。
「あんたこれを私に食べさせるつもりだったの?少しは疑えよ」
「カナリヤ…なのか?」
「そうだけど何」
「やっぱ君はそっちが本性か」
「ええ、そうよ」
カナリヤはベッドに座り足を組んだ。
「失望した?」
「いいや、全然。俺はそっちの方が好きだな」
「調子いいこと言っちゃって」
カナリヤはふっと笑った。久しぶりに本気で笑ったかもしれない。今まで作り笑いだったから。
「それより誰がカナリヤに毒を盛ったんだ?」
何となく予想はついている。だが、そいつらの情報があまりない。そう確信できる証拠がない。
どうすればいいのか。考え込んでいると
「カナリヤ。君は何を考えているんだ?何をしようとしているんだ?」
「……」
カナリヤは何も言わずシャリングを見た。
「いつか分かる時がくるよ。それまでは何も言えない」
ベッドから立ち上がり棚に瓶をしまいお粥は捨てた。
「それでも私に着いてくる?」
ニヤッとした顔でシャリングを見た。シャリングは小さく笑い
「うん、ついて行くよ」
「ほんとあんたっておかしいよね」
「褒め言葉として受け取っとくよ」
二人は笑った。こんなに笑ったのカナリヤは何年ぶりだろうか。
しかし、すぐにさっきの顔に戻り
(私に毒を盛るってことは……私があの秘密を知っているからか…?)
「シャリング。私と一緒にいてもいいが。くれぐれも周りに気をつけて。いつ誰に襲われるかわかんないよ」
「え?なんで?」
「今は話せない」
(ほんとカナリヤは何を考えているのだろうか)
考えれば考えるほど分からなくなった。
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