やってきた薬師ー⑥
「カナリヤ~行こう行こう」
「待ってよ~」
二人の女の子が森を走り回っている。そこでたくさんの植物を見ては採取したりした。
「ねぇねぇこれみて。初めて見るキノコじゃない?」
「へぇ、これ毒キノコかな?」
「食べてみる?」
笑いながら言った。
「やめてよ、それで死んだらどうするのよ」
二人で笑いながら話していた。楽しくてたまらなかった。
しかし周りが一気に真っ暗になった。その途端前にいた女の子がどんどん沈んでいく。
「助けて!」
「ルリス!」
「カナリヤ…!!」
女の子はそのまま消えた。必死になって探したがどこにもいない。そこで画面が切り替わった。
目の前に見た事のある女の子が立っている。
「ルリ…ス…?」
それは小さい頃仲の良かった女の子だった。カナリヤはルリスが大好きで子でいつも一緒にいた子だ。
「カナリヤ。私のために危険なことをしないで。あなたはあなた自身の道を歩いて」
その子は真剣な目で言ってきた。
「歩いているよ。今自分がやりたいことをしているよ?」
「いいえ、あなたがすべきことはこれでは無い。あなたが小さい頃になりたいって言ってた夢はどうしたの?」
透き通るようなブラウンの瞳は悲しそうにしていた。
「それを今叶えているじゃない」
「あなたが言っていた夢はこんなものじゃない!」
必死に叫んでいる。カナリヤは何も言えなかった。
確かにそうだ。小さい頃言っていた夢は薬師。みんなの役に立ちたい。それがカナリヤの夢……だった。
「あなたがしようとしていることは私が望んでいることではない。私が望んでいるのはあなたの幸せな未来」
カナリヤは幸せの未来と言う言葉で手が震えてきた。
「……幸せな未来……?私は幸せな未来を掴むために今まで生きてきた。ルリスが私の生きがいだった。それなのに……あなたがいなくなって生きる意味を失った!生きる意味を失ったから私は…別に死んでもいい!だったらあなたを奪った人達に復讐しようって思った!」
カナリヤは真っ黒な瞳に涙を浮かべながらルリスに言った。ルリスはただただカナリヤを見つめていた。
「じゃあ私はどうすればよかったわけ?生きる意味がないのに生きろってこと?そんなの苦痛よ!だったら私の好きなことをしたっていいじゃん!」
思い切り叫んだ。ルリスは俯いた。
「……ごめんね……」
ルリスが涙を流した。手で隠していたが零れているのが見えた。ハッとし我に返りルリスを見た。
「あなたが夢を捨ててしまったのは……私のせいだよね…ほんとにごめん……」
「……!ルリスは悪くない!これは私が勝手にしていること。ルリスには関係ない!それに……悪いのはアイツらよ…」
さっきまで零れていた涙は消え怒りが溢れ出てきた。
「確かにあなたのやりたいことをしていいわ。私が止める権利はない。だけど、これは覚えておいて。あなたのその力は人を傷つけるためじゃない。人を助けるために使って」
涙を止め真剣な顔で言った。けれど少し手が震えていた。ルリスはカナリヤを心配して言ってくれている。
それはカナリヤも分かっている。けど、大丈夫。私はあのころの弱い私じゃない。強くなったんだ。
「……分かっているよ……ルリス。ありがとう。こんな私を心配してくれて」
声が震えていた。カナリヤはルリスに手を伸ばした。
「私もすぐにそっちに行くと思うから待っててね」
「……ダメ……カナリヤはこっちに来てはいけないわ。そろそろ時間よ。早く戻りなさい。私のいるところはあなたの来ていい場所ではない」
ルリスはカナリヤを突き放した。
(嫌だ…行かないで…ルリス……!)
ハッとして意識を取り戻した。周りを見渡すが自分の部屋だった。ルリスはどこにもいない。目からなにかこぼれているのに気づき手を当てると
涙を流していた。さっきのは夢だろう。
「ルリス……ちゃんと恨みは晴らすからね…」
改めて心に誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます