やってきた薬師ー②

城に住むようになりカナリヤは毎日のように患者を見て回っていた。休む暇もなく病院に運ばれてきた人たちを見ていた。


そこで一つカナリヤの頭の中に疑問が生まれた。なぜこんなに毎日毎日病人が入ってくるのか。


それもほとんどが熱や体に傷がある。体もなぜか細っている人ばかりで若い年代が多かった。


病院の医院長に聞いても


「毎日山とかに行ってりゃ怪我とかはするだろう。それで疲れが溜まって熱が出てるんじゃないのか?」


別に理由があってもおかしくないと思ったがあまり調べない方がいいと判断した。もし不振な行為でバレてしまったら叶えたいことも叶えられなくなる。


病院に入る前はほっぺを叩いて笑顔を忘れずにする。そうしていくうちにカナリヤはみなに愛されるようになった。


誰にでも優しく接し辛い時はいつもそばに居る。そんな存在がいるおかげで病院は明るくなる。


「本当にいつもありがとうね~」


「いえいえ、お易い御用です」


ニコッとしながら看病していた。


(めんどくさいな、こんなことやっている暇ないのに…まあしょうがないか。こうするしかないんだから)


一日中病院を回ったあとは城に戻り薬草で遊ぶ。だが、カナリヤにはいつも後ろに付き人が居て好きなようにできなかった。


いつも見守られていてうんざりするほどだ。一人になりたいのに必ず付き人がいるから一人になれない。


調べたいことがあるというのに付き人がいて変な行動をすると怪しまれる。山に一人で薬草などを取りに行きたいと言っているのに中々行かせてくれない。


ましてや、もっと大勢の人を連れてくる。


(勘弁してよ。やっぱりあの王はまだ私のことを信じてはいない…どうやって信用させるか…)


その時いいことを思いついた。けれどこれはとても危険なことで失敗すれば殺されるかもしれない。


これは賭けである。成功すればいい方向に進む。失敗すれば悪い方向へ進む。それによりカナリヤの運命の歯車が動かされる。


だが、これをしなければ一向に前へ進まない。やるからにはしっかりとやる。


早速カナリヤは行動に移した。まずは付き人から変えなければならない。


(感の良い奴だとめんどくさい。大人も結構厄介。もし見つかった時大人だと体の大きさに違いがある。だから子供の方がいいな。男か女かと言われたら勿論男)


そんなことを病人を看病しながら考えていた。誰もカナリヤがこんなことを考えているとは想像もつかないだろう。


笑顔をしていればみなあっさりと信じる。簡単なもんだ。人間というものは。その人の裏の顔も知らずに。


(まあそのおかげでこうやって今過ごせているのだが。問題はないが)


付き人を男の子供にするのならば同い年。そしてそれは公爵家などの中から探す。農民でもいいがそれもそれで大変だ。


それに王が付き人を農民にすることは無いだろう。カナリヤは仕事を終えたあとは城に戻り王に頼み事をした。


王は寝室で仕事をしているようだった。そこを何とか付き人に頼み王を呼び出した。


普通はカナリヤが行くべきであるが王が大広間で待っていろと言ったため座って待っていた。


するとそこにやってきたのは王とその子供の皇太子だった。

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